私が田舎暮らしを始めたワケ
今だから告白します。
東京の会社を辞めて京都のずっと北の端にある田舎町にやってきた一番の理由は吉本新喜劇を観たかったからでした。
土曜の昼下がり、ゆっくり起きて吉本新喜劇を観ながら家でゴロゴロ過ごす、ただそんな生活が懐かしかったのです。
そんなわけで、20年ほど働いてきたIT業界にキッパリ別れを告げ、なんとなく出会った京都府の端っこにある田舎町にやってきました。
都会暮らしに疲れたワケでもなく、田舎暮らしに憧れたワケでもなく、ただ新喜劇観たいなと思ってやって来たのです。
東京の生活もまあまあ長くなってきたし、身体のDNAが関西のゆるいノリを懐かしがったのかもしれません。
「京都(府)だからいいか」と軽い気持ちでやってきたら、
ぜんぜん京都じゃない!
日本海側にある北の京都はとんでもなく田舎だったのです。
京都(市内)は大学時代いい感じで過ごした街だったので、「京都は一生に一度は住んでみたいな」となんとなく憧れていたところでした。
だから偶然友人から「京都で募集してる仕事あるよ」と聞いた時には(ああ、憧れの京都に住める)と決めちゃったのです。
ところがいざこっちに来てみたら京都(市内)まで遠いのなんのって! !
いや、一応、京都(府)なんで京都で間違ってはいないんですけどね、、、。
みんなのイメージする京都って、神社仏閣があって、舞妓さんがいて、大文字山があって鴨川が流れている、そんな京都じゃないですか?京都市内の人からすれば、北区までいけば十分遠い、という感覚かもしれません。
でもね、実は京都(府)って結構広いんです。宮津の天橋立から舟屋のある伊根町だって立派な京都(府)。日本海の荒波があって、カニが取れて、海岸でワカメを干していても京都(府)なのです。
電車を乗り継いで京都(市内)まで出ようとすると3時間以上かかる。同じ京都(府内)なのに、です。東京に住んでいたときだって、新幹線で2時間もあれば京都に行けたから、とんでもない京都詐欺に引っかかった感じです。
なんて散々書いてくると「いまいる所がイヤなの?」「田舎が嫌いなの?」って思われるかもですが実はそうでもありません。
けっして田舎が好きとか憧れて来たわけじゃないけれど田舎が嫌いってわけでもないのです。
田舎は好きでも嫌いでもありません。もともとアスファルトに囲まれた大阪の街中で生まれ育って、働いていた職場も東京のど真ん中。田舎はたまに遊びに行くだけの遠い場所というイメージしかなくて、住む場所として考えたことは一度もなかったのです。
京都が好きで、吉本新喜劇が観られるという理由で来たところがたまたま田舎だっただけ。
いざ住んでみた田舎は、というと意外に悪くありません。いや、それどころか思いのほか居心地がいいかもしれない。自然があって、食べ物がおいしくて、なんて書くとあまりにありきたりですが、その「ありきたり」がいいのです。ずっと都会に住んだままだったら、きっと想像もできなかったありきたりの自然や暮らしがここにはあります。
家は築100数十年、古民家と言えば聞こえはいいけれど、床は抜けそうだし、二階には得体のしれない生き物が住み着いているし、雪が降ると障子が開かなくなるし、トイレはもちろんボットン。
でも、お風呂に入りながらホタルが観れたり、縁側で寝そべりながらネコと一緒にお月見を楽しんだり、素敵なこともあります。
エアコンはないけれど、ネコに従えばうちの中で一番快適な場所を教えてくれます。家の中なのにオニヤンマが横切ったり、畳の上でネコがトカゲとじゃれあっていたり、なんでもありです。
家の中がそんな具合だから、庭にもいろんなものがやって来ます。トントンノックするから玄関開けたらシカが立っていたこともあったし、庭の柿の木でクマが腰かけて柿を食べていたこともあったけどもう驚きません。
草が生い茂った庭の奥からごそごそと、知らないおばあちゃんが鎌を片手に出てきたときはさすがにびっくり!
「これ、卵とじにしたら美味しいで」
って、うちの庭で摘んだワラビをおすそ分けしてくれましたっけ。
そんな京都じゃない京都いなか暮らし始めてはや9年、実は我が家にはテレビがないのです。
あんなに、あんなに吉本新喜劇が観たくて、会社を辞めてまでやってきたのに、テレビがないなんて!
家が古すぎてアンテナが立てられなかったのです。
最初の頃は、家に帰ってもテレビがなくてそわそわしたりしましたが、今はすっかりテレビのない生活が平気になってしまいました。
テレビがなくてもここでの暮らしはぜんぜん退屈することがないのです。
庭でクマに出会ったり、鎌を持ったおばあちゃんが出てきたり、新喜劇と同じくらい?面白くて刺激的な毎日です。
「田舎は退屈でつまらない」なんて誰が言ったのだろう?
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