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初めて罹ったコロナで一家全滅

久しぶりに会った友達やその家族が、実はコロナになってね、なんて話を何度聞いたか分からないくらい周りはコロナ経験者が多くなっている。
その話題が出る度、うちの家族は誰もまだ罹ってなくて…が、決まり文句。罹っていない方が、少し珍しくなってきていた。
娘はいまだに外出時にはマスク、私もバスや人混みではマスクを付けるなど気を付けてはいたから、まさかウチが、という感じだった。


夫がコロナになった。
二日後、私にも症状が出て陽性、同じ日の夜に娘もまた発熱。
一瞬にして一家コロナ経験者となってしまった記録。


夏風邪かコロナか

夫が、洗面所にイソジンを置いた。
「これ予防にもなるし、みんなイソジン使って」と。
今考えたら、怪しい。この頃から喉に異変があったんじゃないかと思う。

数日後、なんか怠くて熱っぽいと夫が言い出した。
その前の週にゴルフに数回出掛けていたので「コロナじゃないの?」と疑いの目を向ける。
「いや、夏風邪っぽい」と根拠のない否定。
「でも念のため、部屋分けた方がいいかも」
と弱気なことを言うので、その日から私は娘の部屋で寝ることにした。
この日から夫婦の寝室が、夫の隔離部屋になった。

夫は、よほど怠いのか部屋でほとんど寝ていた。熱も気付くと37.6度くらいに上がっていた。
普通であれば微熱より少し高めの微妙なラインだ。だが、夫の平熱は36度に届かずかなり低い。それゆえ夫にとって37度超えたらかなりの熱なのだ。この程度の熱でも熱があると騒ぎ出す。
熱が出たことで私と娘は、夫のコロナを疑い、いつも以上に距離を取った。


夫はトイレに行くたびにリビングに顔を出したり、アイスノンを交換したいとキッチンにやって来た。

「来なくていいから!連絡くれたら持って行くし!」
「寝室のドア前で受け渡しにしよう!隔離の意味が無いから!」
と声をかける。

いや、実際は
「出てこないで!ウロウロしない!!」と結構強めに声を荒げていた。
夏風邪かも、と言っていた夫の声は小さくなっていった。
元気な女二人組みは、強い。


次の日、夫の熱は下がらず咳もし始めた。
わー、絶対コロナじゃないの?
疑いがほぼ確信に変わっていく。

「ゴルフに一緒に回った人が、似たような咳をしていて気になったんだよ」
と、夫が恐る恐る話し始める。
「エアコン付けっぱなしで寝てたら夏風邪ひいちゃって」
その人は笑いながら言い訳をしたらしい。

その人は、夫の直接の知り合いではなく初対面の人。ゴルフ仲間に誘われて初めて行ったゴルフ場で紹介された知り合いの友達ってやつ。
咳は気になりつつも夏風邪と言い張るその人も含めて、そのまま一緒に回ったらしい。初対面だからどんな人かも分からない、本当に風邪って場合もあるから避けることも難しいよね。その場のことは理解できた。
屋外とはいえカートも隣り合わせで乗ったり、昼食も取っているから感染のリスクは十分にあった。

その話を聞いてますます疑いが強くなる。
近所の病院に電話をしてコロナ検査に行くように促す。夏風邪かコロナかでこちらの対応も変わってくるから、はっきりして欲しい。
朝からこの暑さの中、熱ある人が病院に行くことだって大変だ。行くまでにも具合が悪くなるんじゃないかと思う。コロナの心配も拭えないが、車で病院まで送ることにした。
車の後部座席に夫を座らせ、病院前に下ろしてから私は近くで待機した。病院の駐車場は満車だった。

予約していたので、検査はすぐにしてもらえたようだ。検査は院内に入らず、発熱外来窓口の外で行う。すぐに結果が出たらしく、思ったより早くLINEが鳴った。

陽性だった。

薬を処方され会計を終わったタイミングで、再び連絡を貰い、夫を拾って自宅へ戻った。

自宅に戻って、一気にコロナ体制となる。
タオルを別にし、歯ブラシを遠ざけ、消毒液を寝室前に設置。
問題は、家庭内感染を食い止められるかどうか。



私の感染

次の日、朝起きたら「あ、熱あるかも」と感染してることを体で感じる。
起床時36.9度で、平熱より少し高い。
30分ごとに小まめに計っていると、37度はあっという間に超え38.3度。
身体が熱い。熱はあるが倦怠感はない。
病院に電話して私も検査することにした。きっと陽性だけど、薬を貰う必要がある。しかしこの暑さの中、歩いて病院に行く元気は無かった。
夫は昨日検査したものの発症はその前からだと思われ、熱も下がっていた。車の運転はできると言うので、病院まで送って貰った。
駐車場はこの日も満車。停められなかったので終わるまで違う場所で待機してもらう。

予約していたので、発熱外来の窓口で名前を言うとすぐに検査。
検査してから結果が出るまでの間、外の椅子で待つ。

午前中とはいえ、太陽がじりじりと当たる。病院の看護婦さんが、窓口から日傘を貸してくれた。優しい。日焼け止めも塗らずに出てきたことを後悔していた。熱があって熱いのか、太陽が当たって暑いのか、とにかく焦げそうだった。

炎天下の下、置いてある椅子は駐車場の一角に設置されており、ちょうど車の真後ろにあった。椅子の真横に停められた黒いワゴン車には、誰かが乗っているのだろう、エンジンが音を立てていた。車のマフラー部分から出る熱風が顔にかかる。よりによってこの位置でエンジンかけっぱなしは辛い。
熱で熱いのか、照り付ける太陽で暑いのか、くらくらした。たまらず椅子から立ち上がる。ここに座っているだけで倒れそうだった。

「結果、出ましたよ」

やっぱり陽性だった。
昨日、夫が検査に来ていることを伝え、コロナ用の治療薬があれば夫の分も欲しいと伝える。
夫は、ゴルフ仲間に陽性だったことをLINEで伝えたら、その時一緒にラウンドした全員が陽性となっており、その奥さん達にも移ったと連絡を貰っていた。原因は、咳コンコン男に違いない。
「なにが夏風邪だよ、まったく」と、それを聞いて怒り沸騰の夫。

最初はあなたも夏風邪かもって私たちに言っていたわよ、の言葉は飲み込んだ。よく考えたら、今のご時世エアコン無しで寝るのも厳しい暑さ。それを”エアコンで夏風邪”って昭和の言い訳のよう。(私も昭和だけどさ)

夫は、LINEでコロナ用治療薬があることを友達から聞いたようだ。
自分が検査に行った時には、先生から治療薬のことは言われなかったようで私から薬のことを聞いてくれ!と、夫に強く言われていた。

コロナに罹ったのは初めてと伝えると、治療薬はそんなに勧められなかった。本人が欲しいなら出すが、高いので無くても大丈夫ですよと言われる。
夫はすでにしんどいを連呼していたので、高くても欲しいと伝えて処方してもらう。
それが、「ゾコーバ」だった。
他には「パキロビッド」と「ラゲブリオ」と抗ウィルス薬があり、いずれも軽症から飲めるタイプ。ただゾコーバと違うのは価格。最初の2つは、3割負担でも3万円近くする。ゾコーバはその半額くらい。
私と夫の分、2セットをお願いする。高いが仕方ない。最初から購入するつもりで現金を持って来ていた。

「ご家族は二人?」
「娘がいます」
「娘さんもきっと感染する可能性高いので」

家に戻ってから大人二人が感染していて、どう娘を感染から守るか頭を悩ませた。おばあちゃん家に行ってもらうにしても娘がもし感染していたら、今度は母が心配。娘はもう大学生なので、ホテル隔離も考えビジネスホテルも調べてみたが、お盆の時期で連泊を予約するのは難しかった。
どうしよう、自宅隔離でいけるか。
答えが出ないまま、夜になった。

そして、その日の夜に娘も発熱した。

(つづく)

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