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「もう間に合わない」 とあきらは思った。 「あの、これ使います?」 ふいに、後ろから声を掛けられ振り返ると、女の子、いや、女性が見上げていた。 「え?いや、大丈夫です。申し訳ないです、使えません。お気持ち、有り難う」と、あきらは驚きながら言う。 「でも使って下さい。私はもう使ったから必要ないんです」と、女性は言い、あきらの手を取り、握らせた。 「いや、受け取れません」と、返そうとした瞬間に、女性は微笑み、さっと走って階段を駆け上がり消えてしまった。 「どうし
さっちゃんは、考えていました。 どうしても、隣にいるのケンタくんみたいに使えなかったから。 幼稚園の先生に言われた「こっちは、お友達に向けちゃいけないものですよ」 という約束は守っているのに。 ケンタくんは、いつもさっちゃんの方に「こっち」を向けてくるので、先生に怒られてばかりいます。 なのに、ケンタくんの方が上手に使えるのです。 おうちに持って帰って、頑張って動かしてみたけど、お母さんが言うような「チョキチョキ」にはなりません。 がっちゃん。がっちゃん。 お