再登場怪獣と世界観
今週のウルトラマンクロニクルZで取り上げられたキリエロイドⅡとバロッサ星人。共通点として挙げられたのは、ウルトラマンに執着することでした。特にキリエル人はキリエロイド、Ⅱ以外にもちょくちょくダイゴの前に出てくるので、印象深いという人もいるんじゃないでしょうか。
怪獣の再利用は初代から行われており怪獣・宇宙人の人気が出た結果又は、苦肉の策として現在も使われています。ニュージェネシリーズでは作品をまたいで再登場し度々ウルトラマンに挑戦していきます。
再登場する意義
バルタン星人、レッドキング、ベリアル、ゴルザ、ガンQ、ヤプール、ブラックキング、ノーバ、ババルウ、グランドキング、セブンガー、デマーガ、ケムール人、パゴス、タイラント、ゼットン
パッと今思いつく限り挙げてみるとウルトラマンを良く知らない人でも聞いた事があると思うのではないでしょうか。再登場するという事は基本的に、広く知られているということになり、「昔を思い出して見てみようか」という感情を動かすものだと思います。昔の作品も当時の持ちうる技術を持って表現されており、単純な比較はできませんが怪獣の見せ方や特性をアップデートして現代に蘇ることになります。
世界観を厚くする
一作品内に再登場する怪獣は、その世界観の掘り下げに一役買うことになります。特にその傾向が強いのはティガ~ガイア辺りだと思っています。一例を紹介します。
ティガからはクリッターおよびガゾート。クリオネのような姿をする彼らは、自分達の住処を追われたことで人間たちに襲い掛かることになります。怪獣をただ倒せば良いではなく、何とか良い落としどころを見つけられないかと奮闘するのがGUTSの「セカンドコンタクト」でした。クリッター被害は合わせて2度発生し、ついにGUTS上部組織TPCは殲滅作戦を発動します。この作戦前のGUTS隊員の会話で怪獣を倒す是非について問うシーンがあります。少なくともガイア・コスモスの怪獣の扱いの結論に至るまでの問題提起の一つとなる怪獣です。
ダイナでは、ティガの問題を一部引き継ぐため、クリッター事件を引っ張った「夢幻の疾走」やゴルザの再登場等、地続きの話が組み込まれる事になっています。
ダイナオリジナルの宇宙人といえばミジー星人。打倒ダイナを掲げる彼らは、人間に擬態して地球に潜伏していますが、くしゃみをすると正体が出てしまうというコミカルな役回りでした。本編2回と本編後に出たOVで計3回の登場を果たしており、ダイナの明るい作風を語るには外せない宇宙人でしょう。
続いてガイアでは、物語序盤で登場した地球怪獣が、物語終盤では根源的破滅招来体に立ち向かうとして次々に再登場しました。ここで個人的に外せないのはティグリスでしょうか。地球に現れるようになった怪獣を先に殲滅してやろうという人類の暴走の一端を描いたエピソードが印象的です。別個体が登場したブリッツブロッツ戦では善戦するも破れてしまう訳ですが、作中の登場人物が怪獣の見方を変えるエピソードとなっています。
再登場と新たな個性
メビウスで再登場のツインテールは水中の方が強い。逆に魔王獣はマガ要素を抜いた素の怪獣グエバッサーやマジャッパ。テレスドンの穴掘りドリル。ハイパーゼットンのテレポート。初登場当時では出来なかった表現や姿を現代でアップデートすることが可能になりました。再登場についてはギャラファイTACのようにウルトラマンにも適用することができますが、同一人物であるが故に難しい部分と言えるでしょう。しかしマルチバースのおかげで、過去作の怪獣が出てくるハードルは下がっていると感じます。スーツの問題等は一旦置いとくとして。
個人的な意見
円谷プロが過去の作品を大事にしているのは十分わかるのですが、今の小さな子供たちが触れる「自分達の世代だけの怪獣」を作って欲しいなと今回の記事を書いて思いました。再登場は過去の作品に触れる円谷の武器ではありますが、逆に弱点とも思っています。今の平成3部作世代が大人になって、クロニクルZ関連の商品販売で熱狂しているのは自分でも分かります。ティガの新骨彫アーツが欲しいと思った私がいるので。
今の子供たちが大人になった時に、怪獣ソフビで盛り上がる人はどの位いるのだろうと考えるとそもそも怪獣の絶対数が少ないのではないかと。ストーリーのボス怪獣、やメインの悪役キャラクターだけを売りにするのではなく、バロッサ星人のような世界観を深める印象的なキャラクターを新規で作って損はないと感じています。
本当に一から十まで完全新規の作品を作るのは、円谷プロにとってまだリスキーなのかなと思っています。ウルトラの人気がZで盛り上がり、シンウルトラマンを控える中で、これからどのように作品ができるのか楽しみにしています。