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第17夜 上がりくるモノ
またぞろ「探偵ナイトスクープ」ネタかよと思われるかもしれないが、怪しい話、変わった話には反応せずにはいられない性分なので、ご容赦願いたい。また、関西地方以外で「まだ放映されていないのにネタバレはご免だ」というかたは、ずっと下の【 】内だけ楽しんでいただけると幸いだ。
2021年7月9日の「探偵ナイトスクープ!」で夢に関する奇妙な依頼が投稿され、解決された。
依頼は、(2021年)現在72歳、埼玉県在住の男性から。55年前に自転車旅行で茅ヶ崎へ行ったときに姫路から来ていた同い年の友人と知り合い、意気投合。同じテントで一夜を過ごした。しばらくして写真が送られてきて文通が続いたのだという。時は経って今から12年前の還暦の時、この姫路の友人から手紙と写真をもらった。といっても夢の中でのことだ。
写真は、家族写真、趣味のパラグライダーの写真、その最中に取った阿蘇山上空からの写真だそうで、市役所勤めなど近況がつづられていた。気になった依頼者は、昔の手紙を頼りに連絡を取ろうとしたが、「宛先不明」で帰ってきたのだという。そこで探偵の出番となり見事本人と会うことがかなったのだが、問題はこの後だ。
夢での出来事を一つひとつ確かめていくのだが、55年ぶりに会う旧友の特徴や職業など当たるはずもなく、ことごとく外していく。ここが笑いのポイントなのだろう。しかし唯一、趣味のパラグライダーは正解しており、しかも夢で見た写真は本人が見せてくれた写真に酷似していた。それほどメジャーな趣味でもなく、70代の老人の趣味にしては、やや野趣に富む類だろう。偶然に少し鳥肌が立った。
夢は、この怪談拾遺でも触れてきたように、不思議な出来事の橋渡しになる要素だ。もちろん今回の依頼も「偶然」でかたずけてしまえる。オカルト好きなら夢と集合的無意識とのつながりや、アカシックレコードなどを挙げるだろうが、ここではそれらを論じない。
ということで、夢にかかわる話を一つ。
【上がりくるモノ】
知り合いのEさんは10年前、埼玉県のK市に住んでいた。同じ映像関連会社に勤める旦那さんと結婚しての二人暮らしだ。仕事はハードで、朝二人で出社した後は、夜遅くに帰宅しそのままシャワーを浴びて寝てしまうというのが日常だったという。
そんな中、Eさんが妊娠した。
意外につわりがひどく、家で仕事をしていたが、それもままならなくなって、休職することにした。
つわりの苦しみに耐え、ベッドで横たわる生活をしていると、仕事ばかりでほとんど家にいなかった生活では気が付かなかったことに気付かされるようになった。それは、昼間の訪問者や外で遊ぶ子供たちの声など地域の賑わい、日常の生活音といったものだ。
加えて、足音を忍ばせて家に入ってくるモノ音に気付いた。
最初は、先に部屋で休んでいる自分に気を使った主人が物音を立てまいと気を使っているのだと思った。しかし、朝、旦那さんを見送った直後や、帰ってくるはずのない昼間、埼玉県にいないはずの出張中などにもその気配を感じるようになった。
しかも、玄関辺りにあった気配は日がたつにつれて深く家に入ってくるようになった。しばらくすると、寝室の扉のすぐ向こうあたりをウロつくようになったという。時間帯から考えても、そしてその気配もまったく旦那さんのものとは違ったという。
ずっとその気配を無視していたが、それが悪かったのか、おなかが随分大きくなる頃には、行動はさらにエスカレートし、寝室に侵入するようになった。体調不良もあり、構わないでいると、ベッドでぐったりしている大門さんをのぞき込んだり、顔に息を吹きかけられたりするようになってきた。ただ、そこで目を開けてもベッドルームには誰もいない。濃厚に気配が残るだけだ。そして臨月になると、冷たい感触で腕を強く叩かれるようにまでになった。
その後、無事に病院で息子さんが生まれ、自宅に帰ってきてすぐに夢を見た。孫の誕生を心から祈っていたものの、その顔を見ることなく亡くなった義父が何かを言っているというものだ。声ははっきりと聞こえないが、それがEさんには、「もう大丈夫」と言っているように思えた。
夢を見た日から、その家を引っ越す3年後まで、一度も妙な気配を感じたことはなかったという。「家に何か憑いていたものを、亡くなった義父が祓ってくれたのか……確たることはわからない」と話してくれた。
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