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【禍話リライト】知らない同級生
卒業アルバムにまつわる怪談は多い。うろんな記憶も含めて、長い期間人の様子を詳らかにするため奇妙な点に気づきやすいためだろうか。
今回の禍話でも数話披露されたが、その中で中編を。
【知らない同級生】
現在30代のAさんが高校生の頃、比較的同学年の人数が多かったのだそうだ。また、私立・公立、文系・理系でコースが分かれていたためか、顔は知っているが交流はない……といったような同級生が多かったのだそうだ。
最近になって、高校の時の思い出が脳裏をよぎることがあった。そこに、必ず出てくる女の子が居て、『この子誰だっけな』と思い出せないのだという。身長や顔などにもこれといった特徴がない。
自分の思い出には、必ず居るので、同じクラスにーーと思うもののアルバムを見てもちょっと見当たらない。思いだす時点とアルバム収録の時点で髪型が違えば、なかなか同一人物とも判別しづらい。
友人に聞こうにも、この記憶の女性が……ともなかなか言いにくい。際立った特徴もないので、説明するのに骨が折れる。まさか「仲良かった人の名前全員挙げてよ」と連絡するわけにもいかない。
ある時、夢を見た。
Aさんが卒業アルバムを見ている。
見慣れたページ、屋上からカメラマンが撮った集合写真の右端、桜の木に一番近いところにその子が立っていた。
「この子、この子、絶対この子のことだわ。居た居た、ここに居た!」
この手掛かりを元に、友達に聞けるわーーと思ったところで、目が覚めた。
「何の夢だったんだろう」
疑問に思いながらも、卒業アルバムを出してきてそのページを開けた。
その空間には誰も映ってなかった。
このパターンの夢を、3回見た。
『気持ち悪いな』と思いながらも、自分の中では、イマジナリーフレンド(想像上の友達)か何かなのかと折り合いをつけていた。
しばらく後の長期休暇の折、実家に帰省をすると地元から離れていない友人から遊びに誘われた。訪ねた後たまたま話の流れで、卒業アルバムの寄せ書きの記述についてのことになり、その友人の卒アルを見ることになった。
もちろん、イマジナリーフレンドの話などしていない。
最後の寄せ書きのページを見ながら話が弾む。
そのうちに、一人がトイレに、一人が台所に、と部屋の中にAさん一人とアルバムが残された。
パラパラとページをめくるうちに、例の桜が入った集合写真のページが目に入ってきた。開くと、夢で女の子が立っていた誰もいない空間に太い油性ペンで何度も×がしてあった。
「何、何!?」
アルバムを閉じて、ドキドキしながら友人たちが戻ってくるのを待つ。
その場は、アルバムにはもう触れずに過ごしたのだという。
「同じ夢を見たのか?」
とはとても聞けなかったのだそうだ。
Aさんは後に別の友人に話を聞く機会があり、そいつは夢の存在を認めた。しかし、悲しいかなざっくばらんな性格ゆえ、そういうこともあるだろう、程度で済ませてしまっていた。気にはしてないという。
結局、判明したのは、そんな女子はいないということだった。
別の人の夢にも出ているのかどうかは分からない。
どうしても気になったAさんは、学校のいわれを調べてみたものの、例えば「進学するはずだがなくなった女子生徒」などという人物は存在しなかった。
全く特徴のない普通の子だそうなのだが。
友達のふりして、皆の思い出に混ざりたかったのか。
〈了〉
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出典
禍話フロムビヨンド 第23夜(2024年12月21日配信)
36:30〜
※FEAR飯による著作権フリー&無料配信の怖い話ツイキャス「禍話」にて上記日時に配信されたものを、リライトしたものです。
ボランティア運営で無料の「禍話wiki」も大いに参考にさせていただいています!
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