【禍話リライト】セミナーのホード
土地にまつわる話は多い。
中には気味が悪いが、意味が分からないという話もある。
これは先週のウェルカム怪談で話された短い話。
【セミナーのホード】
大分県の話である。
当時、Aさんの家の近くにレンタルビデオ屋があった。市場はとっくにDVDに移行していたので、時代の波に取り残された形だ。
ある時から、カーテンで店の中が見えなくなった。同じようなビデオ店が店を閉めているタイミングだったので、この店もそう思われていたものの、駐車場でのクルマの出入りは続いているようだった。
ある時、カーテンの一つが開いていた。Aさんが中をのぞくと、奥にホワイトボードがあり、パイプイスが並べられていた。
ボードには文字が書かれていたが、内容は分からなかった。おそらく高等数学じゃなかったら意味をなさないような文字列だ。矢印で言葉がつながっている。
よく見ると何かを売っている様子だ。
「怖っ!」
Aさんは、こんな田舎のことだからしばらく続くのではないか、人口は少ないとはいえ集客が見込めるのだろうと思っていたそうだ。
ところが、あっという間・半年もたたずに潰れてしまった。
夜逃げかもしれないが、看板もカーテンもホワイトボードもなくなり、出入りする人もいなくなった。
しかし、その建物の中には、以前と同じように整然とイスが並べられていたという。それ以外はすべてなくなってしまっているのに。
今は道路の拡張でその空き地も舗装され道の一部になってしまっているが、そこを通るたびに、Aさんはあれが何だったのかと思い出すのだそうだ。
※ホード(horde) 大群、集団などの意。大量のものを表す場合も。
〈了〉
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出典
禍話フロムビヨンド 第7夜(2024年8月17日配信)
3:20〜
※FEAR飯による著作権フリー&無料配信の怖い話ツイキャス「禍話」にて上記日時に配信されたものを、リライトしたものです。
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