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【禍話リライト】確認男

 一見不合理な事でも、先人の知恵が詰め込まれていることがある。何がしかの理由があってそう伝えられてきているのだ。
 これも似た話だが、間一髪だったもの。

【確認男】

 禍話でリライトさせてもらった「たたずむもの」という話がある。

 この話を聞いたリスナーさんから、かぁなっきさんのもとに、警備のバイトの時に似たような体験をしたとの投稿があったのだという。これはそんな話。

 Aさんの会社では、最後の施設の電気を消す作業を配電盤室のような小部屋に入って行うのだそうだ。
 ただ、Aさんはこの部屋が埃っぽくてイヤだった。加えて、この締め作業の時は、『必ずドアを閉めて行うこと』という不文律が職場にあった。
 ある時、『開けたままやってもかまわないだろう』と二人で見回っていた後に、一人になったタイミングで開けたまま入った。配電盤までは2歩。締めの作業を行っていると、後ろで声がした。
「へ~!」
 驚いて後ろを振り向くと、ドアから半分だけ身を乗り出した女性がこちらを見ている。先ほどまで一緒にいた相方ではない。
 Aさんは警備員をするだけあって、大きな体格なのだが、驚きのあまり思わず甲高い声が出てしまった。
「な、何ですか?」
 「必殺仕事人シリーズ」に出てくる中村主水の上司・田中様を彷彿とさせるような声だった。質問に女性が答える。
「いやー、どうやっていつも電気を消したり点けたりしているのかって思って」
 引き続き高い声だが、丁寧に「この時間は、一般の人は入ってはいけません。お帰りいただかないと」と絞り出す。
「あ~」
 女性はヒョイっと引っ込んだのだが、それが向こうから人が引っ張っているのでなければ無理なすさまじいスピードで、とても一人では動けないような動作に見えた。
 少し戸惑ったが、おそるおそるドアの後ろ、続く廊下を見るも誰もいない。考えてみると当たり前だ。ついさっきまでそこを見回ってきたのだから。
 控室に戻り、震える手で日報に「疲労かもしれませんが、締めの作業中に変な女が話しかけてきました。確認をすると誰もいませんでした」とだけ書いて、施設を後にした。『読まれたらバカにされるだろうな』と思いながら。
 翌日、上司に呼び出され、めちゃくちゃ怒られた。
「お前、配電盤室の扉開けたまま作業したろ」
ーーと問い詰められる。
「はぁ」
「ちなみに、家では何もなかったか?」
 嫌なことを聞かれた。
「家では特に何もありませんでしたが……」
「じゃぁ、まあよかったけど。すごいんだよ。アレ、な結構昔からここに居るらしいんだけど……」
「ちょっと待ってください、居るって何ですか!?」
「知らねぇよ。何て呼ぶのかも分らんわ。アレは危ないから。俺は直接その人と会ってはいないんだけど、以前に、お前と同じように埃っぽいのが嫌で開けたまま配電盤の締めの作業した男がいてな、ドアの外からのぞきこまれて、何か言われて、答えたらいなくなったのはお前と同じでよかったんだけど、家にも来たらしいんだ」
 めちゃくちゃ怖い。上司は、こちらの様子も気にせずに続ける。
「その人は、寝る前に電気を消した瞬間、部屋の中で『へ~。電気ってそうやって……』って言われたそうで、それで病んじゃってな。実家帰っちゃったんだ。今でも電気は点けっぱなしらしい。そういうことになんなくてよかったなぁ」
「よかった~」
 出来事を振り返ると、優しく「入ってはダメですよ」といったのが良かったのか。

 ここで気になることは、普通、人が言うなら、「点けたり消したり」だと思うが、この女は「消したり点けたり」と口にしたという。
 これは、人間と逆の闇の住人の発想といえよう。
 結局Aさんは、その職場を辞めた。
「今はリニューアルされて、別の建物になっていますが、配電盤室の場所は変わっていないはずです。今の人たちはどうしてるのかなぁ……」
ーーと話を締めた。
                          〈了〉 
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出典
禍話フロムビヨンド 第11夜(2024年9月21日配信)
21:45〜 

※FEAR飯による著作権フリー&無料配信の怖い話ツイキャス「禍話」にて上記日時に配信されたものを、リライトしたものです。
ボランティア運営で無料の「禍話wiki」も大いに参考にさせていただいています!

 ★You Tube等の読み上げについては公式見解に準じます。よろしくお願いいたします。


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竹内宇瑠栖
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