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第16.5夜 世界線の変更 壱

 今回は時代小説の回だったのだが、「探偵!ナイトスクープ」で面白い話をやっていたので、順番を変更して怪談回に。もし、「ある詩人のイディオレクト」を待たれていた方がいらっしゃれば、すみません。来週末までお持ちください。

 説明するまでもないが、「探偵!ナイトスクープ」は在阪の朝日放送制作・放送のバラエティで、2021年で放送33年を数える長寿番組だ。関西人で知らない人は少ないだろう。

 この番組の良い点は、不思議をそのまま不思議として放送することだ。(たとえ背景に何かの思慮が働いていたとしても)VTRとしては、怪談に近いテイストで楽しめるものがある。

 動画投稿サイトでのまとめも複数存在するが、「マネキンを愛する女」「四葉のクローバーの声が聞こえる少女」など面白く、怖いものが多数ある。昔、「近所の薬屋さんに河童の子供が薬を買いに来ていた」という話もさらっと流していたことがあり、この番組の懐の深さに舌を巻いたことも。

 さらに、「ピーコちゃんの伝言」というものもあった。これは、保護した迷子のインコを話す言葉をもとに飼い主に届けたいという依頼だった。その言葉というのが、「奈良県三条市」「ピーちゃんごめんね。ここは異世界かも。内職してたら急に誰もいなくなった。ピーちゃんだけでも逃げて。電話もつながらない。私は出ていきます」というもの。

 額面通り言葉を受け取れば、インコの飼い主は世界線を越えてしまっている。


 ネットスラングで「マンデラ効果(マンデラエフェクト)」というものがある。これは、2013年に亡くなった南アフリカの指導者ネルソン・マンデラ氏について、その死亡時に1980年代に獄中死したという記憶を持つ人が多数現れたことにその端を発するもの。普通に考えれば、記憶違いがその説明として挙げられるものの、「世界線の変更」をその理由とするのが、このネットスラングのミソだ。つまり、異なる記憶は別世界での経験によるもので、どこかのタイミングでこの世界(マンデラ氏が2013年に亡くなった世界)へと移動(世界線が変更)してしまったがゆえに、異なった記憶を持っている人がいるのだとする説だ。

 怪談を集めていると、ごくごく稀にこうした世界線の変更によるものではないかと思える話を聞くことがある。有名どころだと、中山市朗先生の「赤いドレスの女」や、昔「人志松本のゾッとする話」で芸人の中山功太さんが披露していた「吉田君の目玉」などが挙げられる。

 この「吉田君の目玉」は類話が多数ある。子供の頃の友達が、ある事件をきっかけに自分以外の記憶から影も形も(人によっては住んでいた家さえ)無くなってしまうというものだ。下記に述べるナイトスクープの話も大きくはこのカテゴリに入るだろう。

 あるいは、noteでまとめておられる方もいらっしゃるが、「ヴィオニッチ手稿」の記憶が二つある話なども有名だ(これは釣りだという話もあるが)。

 いずれ、世界線の変更関係についてはじっくりまとめてみたい。

 さて今回(2021・6・25)の竹山探偵の回は、電球を変えたいがカバーが外れないというベタな企画だったが、依頼者宅を訪問した瞬間に解決してしまい別の依頼を探し始めた。その中で依頼文だけ上がっていたものが、世界線の変更にあたるのではないかと思えた。そのままテキストで掲載してもいいが、せっかくなので、下記に怪談風に書いてみる。

【ユミちゃんの行方】

 広島県の28歳の男性からの依頼。

 久しぶりに高校2年生のころの夢を見た。あの頃付き合っていた彼女ユミちゃんのものだ。懐かしくなって、今も付き合いのある親友たちにこの夢の話をした。

 しかし、みな「そんな娘は知らない」「会ったことがない」という。

 自分の記憶では、彼女ができたときは必ず親友たちに紹介していた。したがって、知らないはずなどないのだが、親友たちは上記のように口をそろえる。

 では、私の記憶にあるユミちゃんは、いったいどこの誰なのでしょうか。


 結局、この依頼者には電話はつながらず、別の依頼を解決して終わっていたが、最後のVTR明けの依頼のまとめで、依頼者からの連絡を募集していたので、続編があるかもしれない。その日まで、毎週金曜の夜中に予約録画を続けようと思う。

 もしかすると、その体験者(依頼者)もこの世界線にいない可能性もあるが。

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竹内宇瑠栖
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