ビジネスモデルを可視化するピクト図解【企画の道具箱 #5】
みなさん、こんにちは!
「ピクト図」や「ピクト図解」(注)という言葉を聞いたことありますか?
ピクト図解はビジネスモデルを「見える化」するツールです。
例えば、新たなビジネスモデルを作ろうとか、新しいサービスを立ち上げようといった文脈で登場することが多いツールです。
ピクト図解は、新しいことを始めるときだけではなく、現状のビジネスモデルを可視化して課題を拾い上げるといったことにも活用できて幅広い用途で使えます。
今回はそんなピクト図解の使い方、作り方を紹介します。
注:ピクト図解は、板橋 悟氏の登録商標または商標です。
ピクト図解とは
ビジネスモデルを図形と線で簡潔に表現したもの
ピクト図解はビジネスモデルを、3種類のエレメント、2種類のコネクタ、2種類のオプションを使って表現します。
ピクト図解表記ルールはいたってシンプルなので絵心不要で簡単明快です。絵心のない私にも便利なツールです♪
ピクト図解に登場する3つの要素を紹介します。
エレメント
エレメントは、ビジネスにおける登場人物であるヒト・モノ・カネの3つを表現したものです。さらに、エレメントオプションを加えて全部で4つの表現方法があります。ヒト…個人の場合はヒト型、企業の場合は長方形のハコ型を使います。
モノ…商品やサービス、情報を表現します。シンプルにマル型を使います。
カネ…債権や売上を表現します。記号はお金を表すエンマークです。
エレメントオプション…何がそのサービスや事業として行われるのかを表現します。製品や提供媒体(アプリ、デバイス類含む)で表現する場合もあります。
コネクタ
コネクタは、ヒトとヒトの間を行き来するモノとカネの流れの関係性を表現したものです。「モノの販売」表記と「カネの支払い」表記を区別して2種類の矢印で表現します。
分かりにくいかもしれませんが、販売(収入)と支払(支出)で矢印の種類が微妙に異なる形となっています。
オプション
オプションはピクト図を見やすくするための補助要素です。
「タイムライン」表記で時間の流れを表現し、「まとめ」表記でモノやカネの流れをまとめて扱うときに使います。
用途・こんな時に使える
ビジネスの場面におけるモデル化というと、例えば業務フローでアクターを明確にしつつ業務プロセスを明確にしたり、概念モデルでデータに着目して関係性を具体化したりと、いくつかのモデリング技法がありますが書くにも読むにも専門知識が必要とされる場合があります。
一方でピクト図解は、いたってシンプルなので、誰でも書けて誰でも分かるため特別な専門知識を必要としないといった特徴があります。また、図がシンプルかつキャッチアップが容易であるため、検討初期における初期仮説作りや検討のたたき台としても活用することができます。
既存ビジネスを可視化
既存ビジネスを改善、強化していく際にどこから手を付けていくのか、手を付けたとしてステークホルダーにどのような影響があるのか?を明らかにしていく必要があります。
複雑に絡み合った現状のビジネス構造を抽象化して大きな問題点を抽出するときに活用することができます。
新規サービスのビジネスモデルを言語化
新しいサービスやビジネスを考えるとき、ピクト図解でシンプルに表現することで、誰に何を提供し何で儲けるのかを俯瞰的に表現し、サービスの中心となる核を明確にすることができます。
作り方
ピクト図解の作り方を説明します。
まずは、3W1Hを洗い出すところからスタートします。
ここで言う3W1Hとは「Who(誰が)=ヒト」、「Whom(誰に)=ヒト」、「What(何を)=モノ」、「How much(いくらで)=カネ」のことです。
ピクト図を書く順番も、「ヒト(Who、Whom)」、「モノ(What)」、「カネ(How much)」の順番で書き進めます。
とっても簡単ですね。
手順と例を踏まえて解説します。ここでは、自社がアプリを介した情報提供を顧客向けに行うといった自社のサービスを例とします。
1.ヒト、モノのエレメントを抽出(登場人物は誰か?)
自社を起点としてみたときに登場する要素を洗い出します。
登場する要素とは、「顧客へ提供するモノ」と「モノを生み出すために関わるヒト」が対象です。
さらに、サービスを提供する際にアプリのような提供媒体がある場合は、提供媒体自体も「エレメント(オプション)」として抽出します。
ここで抽出したヒトとモノそして提供媒体の要素がエレメントになります。
【例】自社サービスとしてアプリを介した情報提供を顧客向けに行う場合のエレメントは、「ヒト=自社、顧客」、「モノ=本体商品、アプリ(情報)」、「エレメントオプション=アプリ(提供媒体)」といった具合です。
2.提供の主体を明らかにする(誰が誰に何を提供するか?)
サービス(商品)の中心となる自社が提供するモノを中心に、誰に提供するモノなのかといった主体を明確にして、関係性をつなぎます。
このとき、主体は「提供者」、「提供方法」、「顧客」に分けて考えると整理しやすいです。
【例】自社サービスとしてアプリを介した情報提供を顧客向けに行う場合、そのサービスの「提供者」はエレメントの ”自社” となり、「顧客」はエレメントの ”顧客” です。また提供者から顧客への価値の「提供方法」は、エレメントオプションとして抽出した ”アプリ(提供媒体)” となります。
「提供者」、「価値の提供方法」、「顧客」の主体が整理出来たら、今度はその主体が授受するモノの関係性をコネクタで繋ぎます。
【例】自社サービスとしてアプリを介した情報提供を顧客向けに行う場合、提供者である ”自社” は ”アプリ(提供媒体)” を通じて ”情報” を ”顧客” へ提供します。さらに ”自社” はモノである ”本体商品” を ”顧客” へ提供するといったように整理していきます。
3.カネの発生タイミングを明らかにする(どのタイミングでカネのやり取りが発生するか?)
最後にカネの発生タイミング、つまり販売・支払いといったやりとりのタイミングをコネクタで接続します。検討しているビジネスにおいてどこで儲けるのか?を明らかにすることが大切です。
最後に、各エレメント(エレメントオプション含む)、コネクタ、オプションで整理をしてビジネスの全体像を可視化します。
【例】自社サービスとしてアプリを介した情報提供を顧客向けに行う場合、提供者である ”自社” は ”アプリ(提供媒体)” を通じた ”情報” または ”本体商品” の対価として”顧客”からカネを受け取ります。
また時間経過とともに、 ”本体商品” で使用する ”消耗品” を ”顧客” に購入してもらうことで ”自社” は対価を得ます。
つまり、 ”自社” にとって、 ”顧客” に自社サービスを使い続けてもらうことが収益創出のカギであり、それは ”アプリ” で ”顧客” に提供する ”情報” が成功要因である、という仮説を表現することができます。
テンプレートとサンプルはこちら
おわりに
今回はピクト図解の話をしました。
ビジネスをモデル化する技法は世の中にたくさんありますが、検討のタイミングや検討の狙い、検討の対象によって使い分けが必要です。
ピクト図解は、プロジェクト初期段階もしくは一定の検討が完了してまとめる段階において、「既存ビジネスを可視化」したり「新規サービスのビジネスモデルを言語化」したりといった場面で活用できます。
ピクト図解で現状を表現することで、自社の事業やサービスの概観が明確になります。ピクト図解化する過程で、案外、自分が直接関与していない業務は正しく理解できていないことに気づかされたりもします。
また、新たな事業やサービスを立ち上げる際には、顧客へ提供する価値を正しく捉えるためにピクト図解で整理してみるてはいかがでしょうか。
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