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捨てられたパンと忘れられたアイデアと
「お皿はいりますか?」と、宿のスタッフの方が朝ご飯用の食器を片付けながら、声を掛けてくれる。
「いえ、大丈夫です」と答えて、幅にして1cm程度、トースターから1/3ほど飛び出した、薄いパン一枚を片手で捕まえた。熱いというほどではない。つまんだまま座席まで移動し、座って、齧る。
おや、うまい。
サクッとした軽い食感に、小麦の風味。何もつけないってのもイケるもんなんやなぁと、そのまま2口食べて、残りはマーマレードのジャムと一緒に平らげた。本日3枚目のトーストであった。朝ごはんが、終わった。
スープと、ソフトドリンク飲み放題と、トーストの薄切りが3枚。
そんな簡単な朝ごはんも付いて1,500円強とは破格の宿であった。
もしかしたら今は、閑散期なのかもしれない。(1)
宿を出る時には、スープやトースターやカップやお皿など、キレイさっぱり片付けられていて、最後のおかわりをした時、まだ7-8枚ほどプラスチックケースに残っていた薄切りのパンは、そのまま横のゴミ箱に捨ててあった。
さて、一日一恥。まさまさのターンです。
お店の音楽がよく「響く」
お昼過ぎ。神保町の宿から、東京ドーム最寄りの水道橋の駅まで、街路樹の道を北進する。ふと暑さがぶりかえしても、もう蝉は帰ってはこない。そのかわり、踏みつぶされた銀杏が匂いを放つ。
駅の手前でふと足を止める。新しいラーメン屋が出来ていた。「甘醤油」が売りらしく、テレビ番組で取り上げられた際の、驚いたような芸能人の顔が、そのアピールに一役買っている。
どれどれ、と。
オススメを尋ねると、つけ麺だということなので沿ってみた。着席して左右を見渡しても、つけ麺は一人だけだったけれど、みんなおいしいということなのだろう。オーダーを待つ間、お店のBGMが耳に入る。
Mr. Childrenの曲がかかっている。
君が話してたの あそこのフレーズだろう?
まるで僕らのための歌のようだ
その音は、懐かしく響くだけでなく、何かしらの記憶も呼び覚ます。たしかこの曲は、とShazamで調べたら、Mr.Children『エソラ』であった。
エソラか、、、その言葉が脳裏に突き刺されば、記憶の沈殿が舞い上がり、その日の雰囲気をもう一度、眺める。
場所は、キューバ第二の都市。サンティアゴ・デ・クーバ。
忘れられたアイデア
サンティアゴ・デ・クーバは、首都ハバナから900km程度、東に位置する。暑さと長閑さと気怠さに、陽気な音楽と人のお喋りが混じった町だ。
「カーサ」と呼ばれる「ホテル業を営むおうち」にホームステイするのが、この国の宿泊の仕組みである。
僕はこの日、朝ごはんを8時に頂いてから、「自分の」部屋に戻り、PCを広げて、カチャカチャと昨夜から取り掛かったファイルを更新していた。
ファイル名 esora_v0.01 作成日 2017/06/16
イマココに集中するのが、旅のセオリーだけど、1年弱続けた旅の終わりが近付きつつあったこの時、急に真面目に「今後」のことを夢想していた。
絵空事として。
上記のエソラと名付けたそのファイルは、今もPCの中にある。
それによれば、
・日本に帰ってから1人で立ち上げる「何か」は、1年毎にメンバーが2人づつ増え、第7半期が過ぎる頃は、7人体制になること
・組織はフラットで、基本的には全員がCo.CEOの立場であり、CEOは「日直」のように、定期的に内部でサイクルすること
・給料は、営業純利益から内部留保分を差し引いて、メンバー全員で山分けにすること(2)
などが書かれていた。当時、具体的な「何か」はまだなかったから、チームのデザインから検討しているようだった。
お待たせしました。
こちら、つけ麺の大盛りです。
つけ麺の大盛りもよく「響く」
お店のBGMが、響くようになったのは、きっと店のオーナーの年齢に、僕の年齢が近づいたからだ。
つけ麺のボリュームが、響くようになったのは、きっと僕の基礎代謝が、順調に落ちてきたせいだろう。
心さえ乾いてなければ
どんな景色も宝石に変わる
うっかり引きずられ、涙が出そうになった。
でもそれは、何に対して?
午後のつけ麺屋さんの、そんな一幕。
(以上)
補遺
1. ゲストハウスの1泊の値段は、需給バランスに応じてダイナミックに変動する。需要の高まるシーズン(例、お花見の時期)は全体的に高くなるし、1週間の間でも、翌日が休みの金曜/土曜日は高くなる。一方、オフシーズンや、翌日が平日の場合は安くなる。最近はオリンピックを睨んだ新しい宿泊施設が増え、供給が増えているので、今後も競争が熾烈になりそうだ。
2. 会計の知識が甘いため、人件費の計算が入れ子になっている模様。実際、これをやろうとしたら、税引前純利益が0になるよう、逆算して人件費を設定するのではなかろうか。
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