絵を描く仕事でダントツ知られてない職業|CMコンテライターって何?
絵を描く仕事の中でもダントツで認知度が低い
画家、漫画家、イラストレーター、アニメーター、などなど…絵を描く仕事と聞くと浮かんでくる業種は色々ありますが、コンテライターを上げる人は滅多にいないでしょう。僕は2010年からフリーランスのCMのコンテライター(コンテマンとも言う)として画業を始めて、今もがっつりコンテライターとして食べてますが、広告業界以外の方で、この仕事を知ってる人に出会ったことがありません。なので、職業の話になった時に、まぁー説明が大変なんです。
最近はもう「イラストレーターです。」と言ってしまうようにしています。別に向こうも軽い気持ちで始めた世間話で、「コンテライターとは何ぞや?」という説明までは求めていないでしょう。それに、イラスト描いて本も何冊か出してるし、イラストレーターと言っても間違ってはない筈!
しかし、余りにもスポットライトが当たらない超裏方なので、自分で照明を当ててみようと思います。この超隙間産業、いや、超隙間画業のこの仕事に。
「コンテライターとは何ぞや?」
まず何故、CMのコンテライターと、わざわざ「CMの」とつけるかと言うと、CMの世界以外にもコンテライターはいるからです。映画とか、特撮とか別の映像業界にもコンテライターはいます。今から説明するのはCM業界のコンテライターの話です。
超ざっくり説明すると、広告代理店の方々は、クライアントにCMの企画案をプレゼンする際に企画コンテという資料を作成します。CMのコンテライターは、その企画コンテのために絵を代筆する仕事であります。
ピンと来ませんよね。そうですよね。なので、ちょっとこちらの動画をご覧ください。
そもそもCMって、どうやって作ってんの?
あ。いきなりもう面倒臭くなってきてる人いますね。まぁ、ちょっとお付き合い下さい。この動画見たら、TVや、YouTube、あらゆる媒体で流れてくるコマーシャル(CM)がどういう流れで作られているかが一発でわかります。ちなみに、イラストは僕が担当しています。
はい、ご理解いただけましたでしょうか。皆さんが日頃ご覧になっているCMは、概ねこのような流れで制作されているのです。どうでしょう。お気づきでしょうか?そうです。
コンテライター、出てこんやないかぁぁぁああい!!
いやぁ、びっくりですね。僕もこの動画のイラスト描いてるとき、全く何の違和感も抱きませんでした。そのくらい裏方であり、黒子であり、影の存在。それが、コンテライターです。あえて、この動画でその存在を示すならば、ここです。この場面。
広告代理店のプランナーさんが、クライアントに対して企画をプレゼンしていますね。手元にコマが割ってある資料を持っています。企画を絵と文字で説明するための資料です。これが先ほどお話した、企画コンテです。この企画コンテのための絵を描くのがコンテライターの仕事なんです。
どうでしょう。超隙間産業ですね。
「何でプランナーが描かないの?」と疑問を持たれた方もいらっしゃるかと思いますが、プランナーの方々は、そもそもはCMの企画(誰を起用して、どんな話で商品を魅せるかなど)を考えるのが仕事です。なので、必ずしも絵が上手である必要はないのです。それに、プランナーの絵では企画の魅力や、意図が、クライアントに伝わらない事もあります。そこに必要なのがコンテライターなのです。
企画コンテってこんな感じ
じゃあ、その企画コンテってどんな資料なの?となりますが、実際の企画コンテは超機密扱いなので、一般の方の目に触れることは滅多にありません。なので、架空の企業の、架空のサービスの、架空のCMの企画コンテを作成しました。プランナーは僕です。
転職アプリ『APPLEPEN』 TVCM A案「砂漠」篇 15秒
これが企画コンテです。コンテライターの仕事は、上のような資料の絵の部分を描くことです。文字のレイアウトなどの体裁を整えるのは、またそれ専門の方がいます。なので、絵だけだとこのようになります。
15秒CMなら、大体8カットから多くて、12カットで構成されています。プレゼンの規模にもよりますが、こういう企画が何案も提案されて、お買い上げになった企画が、皆さんがテレビやスマホで日々視聴されているCMになります。つまり、放送されているCMの背景には、そのCMの規模にもよりますが、不採用になった企画コンテが山と積まれており、その企画コンテ全てに絵が描かれています。
最終的にはシュレッダー行きの絵
では、プレゼンが終わったらこの絵はどうなるのか。企画コンテは超機密扱いなので、採用された案以外は、基本的に全てシュレッダー行きです。後には残らず、一般の方の目に止まることは絶対にあり得ません。あくまで、プランナーの頭の中にある企画をビジュアルで説明して、プレゼンを通過するためだけに存在する絵です。正直言って、それ単体で作品などと認識されるものではありません。
僕もそうですが、絵を描く人にとって絵は、自己表現のツールや、承認欲求を満たすものだったり、自分の子供のような気持ちが宿ってたりするので、ごくごく少数の人に見られただけで、あとはゴミ箱行きの絵を、時間かけて描くなんて考えられないという人もいるかもしれません。コンテライターはそういう職業です。
ただ、プランナーの頭の中にあるものを具現化する最初の人間でもあります。コンテライターなしでは、そもそもプレゼン自体が成立しない場合もあります。事実、今夜も遅くまで液タブの前に立っているし、僕がデータを送らないと週明けのプレに間に合いません。スポットライトが当たらなくとも、必要とされている仕事が目の前にある。世の中の仕事の多くは、そういう存在を意識されていない隙間の仕事で回っているのだとも思います。
それでは、長文読んでいただきありがとうございました。次回は、CMの企画コンテの変遷的なことについて、お話しようかと思います。