愛と哲学のある生き方 - ホリングワース
本日紹介するキャリコン学者は、リタ・ホリングワース。私選・キャリコン学者リストの女性6名の中では一番古く、心理学黎明期を生きた人です。
キャリコン試験では、青年期の発達課題を「心理的離乳」と言ったという文脈で出るくらいなので、以下は、試験にはあまり関係ない話ですが、調べててすごく尊敬しちゃうなと思ったので、紹介します。
ホリングワースは、大学院では教育測定運動のソーンダイクのもとで心理学を学びました。一方で、彼女が教鞭をとった臨床心理学講義はロジャースも聴講していたようです。キャリコンの歴史の中核にいた人なんですね。
実績についてはよくまとまっているこのコラムも一読をお勧めしたいですが、ここで要点を短く紹介すると、:
ニューヨークでは既婚女性の就労が禁じられていたような時代に、月経中の女性の作業パフォーマンスについての博士論文を書き(女性の知能が男性のそれに劣るというのは事実ではないという結論)、晩年は、知能が際立って高い子供たちの発達の研究(そのような子供たちが元来壊れやすい・エキセントリックであるというイメージは不適切であり、そのように言われる原因は社会の不適切な偏見にあるのだという結論)に身を捧げた。
今でこそ一般的に広く受け入れられる論であっても、120年前の当時、それを言う女性は、相当な変わり者扱いをされたに違いありません。
今も「女はバカだ」とか「天才は育てにくい」ということを安易に言う人もいますが、どっちかというとおおっぴらにそんなことを言うほうが知性を疑われる社会にはなっているのではないかと思います…多分。
ホリングワースの選ぶテーマからは、社会によって型にはめられ、本来の資質を歪められることの不当についての切実な問題意識、どんな人もあるがままに受け容れられ伸び伸びと生きられる社会への願いが感じられます。
ホリングワース自身が (就業を求める)女性”であり、天才(IQ180以上の研究してた=自分もIQ180以上だったということ)として、生きづらさを感じることも少なくなかったに違いありません。
英語ですが、ホリングワースの実績についてまとめたショートムービーもありました。彼女のパートナーのハリー・ホリングワースも広告心理学の研究者で(サブリミナル効果の提唱者)、1927年にはアメリカ心理学会(APA)の代表にまでなった一流の学者だったようです。
互いの才能を信じ、支えあう一流のパートナーがいた。
今以上に大変な時代だったでしょうが、社会に不平不満を言ったり怒りをぶつけたりするのではなく、理論でもって人生を貫く哲学を実現し、しかも愛を見つけた。
誰でもできることではない凄みを感じます。53歳で若くして病没してしまったのが惜しまれますが、長生きしていたら、ルース・ベイダー・ギンズバーク(87歳女性にしてリベラル派の旗手として人気の、女性合衆国連邦最高裁判事)みたいになっていたかもしれません。
どなたさまも、ハッピーなライフキャリアを。