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重いタネと軽いタネ

マングローブというのは一種類の木を指すのではなく、塩に強く汽水域に繁殖することが可能な樹木一般の総称である。

その中でも国内南部に見られる代表的なヒルギの木の不思議は、再生産にあたって、落ちると水面に浮かび潮にのって遠く異国まで運ばれていく軽い種子と、ただちに水に沈みその場で新たな苗を生ずる重い種子とを同時に生み出すことなのだが、

一説には、ヒルギは生存戦略としてその二種類のタネを生み分けているのだという。

人間も同じなのかもしれない。

似たような環境で同じ親に育てられた兄弟姉妹であっても、外交的か否か、協調的か否か、神経症的か否かなどの基本性質が一致しているケースの方が珍しく、まったく逆というほうがよく聞く話だと思うのは、気のせいなどではなくて、遥か太古より生物に仕込まれた敢えての遺伝子戦略なのかも。

小さい人たちと接していると、上の子と下の子で全く違っていたりして戸惑うこともあるし、この性質はどっからきたんだろうと不思議に思うようなところもあるわけだが、それが血の中に伝わるなにか先祖脈々の知恵みたいなものの発露だと思えば、まあ私一人の浅知恵でなんとかなるもんでもないし仕方ないなと思えたりもする。

軽いタネならば、のびのびと行くがいい。

重いタネならば、しみじみと根を張るがいい。

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