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ふわの死に思う

我が家のコーカサスオオカブトの「ふわ」がひっそりとその生涯を閉じた。

前の夜には、籠の中でガサゴソ、ブィーンといつものように騒々しくしていたのに、翌朝なんとなく予感がして覗いてみたら、葉っぱの陰で動かなくなっていた。

日記をさかのぼると、去年の11月の頭には羽化していたので、実に5カ月近く生きていたのだ。(夫が)ネットで買った5匹の幼虫のうち、たった1匹だけ成虫になることができた強い奴なんだけれど、冬のさなかに大人になり、夏を知らずに行ってしまった・・・というのは人間の勝手な感傷で、ほんとは、東南アジアでも標高の高い山中に住む彼らにとっては、日本の蒸し暑い夏なんてまっぴらなのかもしれないが。

幼虫としても、蛹化してからも、成虫になってからも、その命の時間軸は、日本のカブトムシの倍以上の、ゆったりとしたものだった。

「ふわ」はメスだったので、コーカサスオオカブトの特徴である長い角はなかったけれど、緑色を帯びた光沢のある羽根と、がっしりしたトゲトゲの脚とで、明らかに日本のカブトムシとは違う戦闘的な存在感があった。

「ペットロス」という言葉がある。

普通は犬猫に使うんだろうけど、小動物でも虫でも、個別の名前を付けたとたんに、なんか、お別れの際に感傷的になっちゃうんだよなあ。名前を付けるって罪だよなあ。そんなこと言ったらペットなんか一切飼えなくなっちゃうけれども。

ありがとう、ふわ。狭いかごの中で他の仲間に見合うこともなく一生を終えた、その命、子供たちと一緒にしっかり観察させてもらったよ。

次は是非、人間の踏み込まぬジャングルの奥に転生して、自由に羽ばたき、目が覚めるような植物の蜜を吸い、強いパートナーを見つけて卵を産み、短く太くカブトムシらしく生きておくれ。

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