人は自分の中に答えを持っている
わたしは筋金入りの現実主義者です。ヒプノシストになったよというと、何人かの友達から「リスクとったね〜」とか「占い師になったの?」とか言われました!いやいや。
確かに、ヒプノシストを名乗る人のなかには、もともと本人がやっているタロットや星占いなどの技術や、霊能力などとの組み合わせで売り出している人が少なからずいます。いや、そっちの方が主流と言ってもいい。
そのような施術者や、そこに救いを求めていく方を否定する意図はありませんが、スピリチュアルな属性とヒプノシストであるということとは、本来直接の関係はありません。エリクソン博士もワイス博士も、自分自身にいわゆる霊能力はないと明言しています。
占いについての造詣はおそらく平均以下。お正月のおみくじをひく習慣があるくらい。あと、石井ゆかりさんの文章が好きなので毎週のアップデートを楽しみに読むとか。
そんなわたしがヒプノセラピーの何がいいと思ったかって、そのセッションで主導権を握っているのは終始来談者であり、そこで出てくる答えはすべて、ヒプノシストによる宣託ではなく本人の事葉によるものということ。
「自分は潜在意識の機能に全く影響を受けず、顕在意識(理屈)だけに忠実に生きている」と言いきれる人はいないはずです。
わたしの大学時代の専攻は経済学部でしたが、その学問の中でさえ、経済的合理性のみに基づいて個人主義的に行動する「経済人」のモデルは不完全だということを序盤に教わります。
大学卒業後、わたしは長らく企業で売上予測にかかわる仕事をしてきました。ドライな数字のモデルに、関係者が納得する言葉を添えることが人より得意だということでこれまでお給料を得てきたのです。
そんな自分が良いヒプノシストになれると思った理由、それは、ヒプノセラピーもある意味、徹底的に Fact Oriented (事実指向)で、かつ「言葉」に敬意を払うメソッドだからです。
実は、それは、わたしが事業会社の売上収益担当者として多くの営業管理職と関わるなかで培ってきた基本姿勢に通じるものがあるのです。
優先される「事実」とは
事業会社における「事実」、それは数字です。うまくいかない現状はいち早く把握して、軌道修正のための正しいアクションを取ることが重要です。どんなに繕っても結果はひとつ。粉飾は破滅の前触れ。
かたやヒプノセラピー(あるいは個人)における「事実」、それは潜在意識のデータバンクから取り出してきた、本人のイメージや言葉です。
人が幸せに生きるためには、自らに内在する事実から目を背けず、ネガティブな経験・認識にも向かい合ったうえで、それを「今」と「これから」にどう活かしていくかを考えることが大切です。
退行催眠をおこなった場合、前世のイメージを得た方から、セッション後に「これって本当にあった歴史的事実?それとも自分の想像?」と聞かれることがありますが、結論から言うと、そこはどちらでも良いのです。最近見た映画のシーンに明らかに影響されているようなイメージでも、それが問いかけに対して自分が出してきた答えなのです。
輪廻転生、魂の真実、トレーサブルな史実、心の機能、自分の想像......どう解釈しても良いのですが、多くの人がそのイメージを持っていて、それを言語化することで何らかのヒントを得るということはまぎれもない事実。
ただ、そういったデータが出てきた際に、ガイドたるヒプノシストが感情や装飾に引きずられ、事実誤認をして浮き足立つと、緊急対策も打てないし長期戦略も誤るし、個人が自分らしく楽しく生きるという第一命題が危うくなってしまいます。それはまさに、企業にとっての健全な事業継続が危機にさらされてしまうのと同じ構造。
「事実」の定義こそ異なりますが、わたしは、出てきた事実=「その人の言葉やイメージ」に忠実であろうとすること、そして、ご本人が選んだ、より良いこれから=「目的」に踏みだすためのサポートに徹することに関しては、ブレない自信があるんです。
ヒプノの「前世」と占いの「前世」との違い
占いとの違いをはっきりいえるのには理由があって、わたし自身が、以前、ある占い師さんから「前世」を教えられたことがあるからです。
前述の通り、わたしは普段はおみくじ以外の占いにお金を使わないのですが、セドナに旅行に行った時、せっかくそういう土地に行ったからというノリで有名な占い師(占星術と自然療法をもとに、体に良い食べ物やサプリのオススメをくれる方でした)のセッションを受けました。
「流産体質で」というガチネタで、サプリやら生活習慣やらを指南してもらった後時間が余ったので、聞くに事欠いて、ふと「昔からインコが好きで。フカッとした首の辺りとかたまらなく萌えるんですが…」と、どうでもいいことを聞いてしまいました。
そしたらさらっと、「あなたは前世でアフリカのハンターでしたから」と言われたのです。
えっ、前世?!えっ、アフリカのハンター!?!
裸足で大地を駆け回り、手作りの弓矢を手に獲物を狩る。大地に耳をつけて動物の足音を察知して、鳥や動物と会話ができたんだって。鳥たちは、獲物でもあり友達でもあったんだって!
何が気に入ったかって、その身体能力が抜群に高そうなところ。今生の運動神経コンプレックスをズドーンとふっとばしてくれたかんじで。わたしはその素敵な話が気に入りました。
数年たって振り返ると、実は彼女の言っていたことは具体的にあれこれあたっています。でも、それさえ「予知能力のある霊能者だった」というよりも「やはり言葉=力だな、あのときの言葉に自分は影響をうけていい方向に向かってきた」と思うのが、わたしという人間。
だから、どちらが良い悪いという話ではなく、占いの「前世」が他人のビジョン(精神世界、想像力、あるいは、もしそういうものがあるとしたら霊感)によるものだとしたら、ヒプノセラピーの「前世」はご本人のそれだよ、と言えるのです。
そのイメージを自分で見たならヒプノ、言われたものなら占い。
メンタル・セラピーの市場サイズ
ところで、日本における占いの市場サイズは一兆円もあるそうです。対して、メンタルカウンセリング・セラピーの市場は2~300億円程度。3%以下です。スマホの保護フィルム市場以下。(Source)
お薬を飲まねばならなくなってしまう手前で、頑張っている人たちが心の棚卸しをするためのセラピーは、もっと認知され、利用される価値があるのではないでしょうか。
だからこそわたしは、「言葉=力」をひきだす手助けをしていきたい。
潜在意識(無意識)は間違いなく我々の一部です。人はみな、自分で知覚している以上に、内奥に叡智を持っているのです。