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こんなの知ってます? 昔の縁起かつぎ、洒落、たとえ言葉、などいろいろ(秋田實『日本語と笑い』より


「縁起かつぎ」
○病気見舞いと鉢植え~切り花の方がいいのは、鉢植えだと「根付く(寝付く)」と言って嫌われるため。
○ハンカチの贈り物~「手帛」の「帛」は「布(きれ)」で縁が切れるに通ずるので縁起が良くないとされる。
○漬け物は二切れ~仇討ちや処刑をする日の朝の食事では、斬る方は「一切れ=人斬れ」、斬られる方は「三切れ=身斬れ」の漬け物をとった。それで普通の家庭では「一切れ」「三切れ」を避け、「四切れ」以上では多すぎるので「二切れ」にするようになった。
○櫛を拾うと禍がくる~油で汚れた櫛は不潔だから。又は「櫛は九四で、好んで「苦・死」を拾うなとも。
○霊柩車は縁起がいい~「墓行く(はかゆく)」つまり、はかどるから。
○そばとマッチ~引越祝いのそばとマッチはそれぞれ「あなたのそばがよい」、「先硫黄(先祝う=今後の繁栄を祈る)」ことから。
○重箱の南天~「難を転ずる」ことから。
○利休と茶をひく~水商売の女性はおうすの茶を男に出す。売れっ子ならば一日中おうすの立て通しで「利休さん」、客のない女は一日中「茶をひく」ばかり。茶は商売人の間では忌み言葉で、それで代わりに「あがり」と言うようになった。
○あたり~「~する」は「損」に通ずるので嫌われ、代わりに「あたる」と言うようになった。「すずり箱」は「あたり箱」、「すり鉢」は「あたり鉢」、「すり棒」は「あたり棒」、「するめ」は「あたりめ」、「顔をそる」を「顔をあたる」、「スリッパ」を「アタリッパ」などなど。

※まだこの辺りは「漬物は二切れ」以外は知っていました(遊女の話は大学で調べたのを覚えていました)。考えてみれば昨今のマナー講師の自己流マナーも大体こんな感じのこじつけですよね。

「看板の洒落」
○酢屋の看板……丸い輪が吊り下げてあるだけ(矢が素通りするから「素矢」=「酢屋」)
○饅頭屋の看板……荒木彫りの馬(アラウマ=あら美味し)
○芋屋の看板……十三里(「栗より(九里四里)おいしい」の意)
○質屋……七屋
○櫛屋……十三屋(「九四」で九足す四)

○さげすみ(大工が墨壺の糸を垂らして墨を打つ時の姿勢から)
※これは本当らしいです。「下げ墨」が語源で、それが動詞化して「さげすむ」、その意味から「蔑」の字に当てて「蔑む」の訓読みが出来たという順なのだとか。

「喩詞」(異音同義)
○五百羅漢の土用干し(醜男揃い)
○こんにゃくの幽霊(ひょろひょろした人)
○米つきバッタが火事見舞いにきたよう(ペコペコする男)
○質にとられたダルマ(まじめくさった顔)
○昼網にかかったミミズク(きょろきょろする顔)
○枕絵の殿様(色男)
○びっこの槍持ち(上げたり下げたりする男)
○ふぐの立ち泳ぎ(妊婦さん)

※「枕絵の殿様」以外は悪口ばかりですね(いや別に褒めてもいないか)。上手いこと言うなあと思いますが、最後の二つはひどすぎて今はもう使えないでしょう。

○蓮葉もの(都会で物を包むのに竹の皮を使ったのに対し、田舎では代用として池の蓮の葉に包み藁でくくったことから、品がないの意味)
○柘榴口(ざくろぐち)(浴場の浴槽への這入り口のこと。銅の鏡は柘榴の実を潰してその汁で磨いたが、浴槽の出入り口は狭く、誰もが身をかがめて出入りした。そこから柘榴口は「鏡磨く」「かがみがく」「かがんではいる」の意)
○うがい(鵜飼いで、鵜が魚を呑んで吐き出すことから、口をすすぐ様子を喩えた)
○松風というお菓子(「緑」という当時有名なお菓子に対して「松の緑の上を行く」の意)
○松風せんべい(表には芥子を振りかけてあったが裏には何もなく、「裏(浦)さびしい=松風」の意)
○おかべさん(豆腐のこと)
○きらず(卯の花・おからのこと。包丁を使わず調理するところから)
○三平二満(醜婦・お多福のこと。額・鼻・顎が平坦で両頬が豊満の意)
○紫(鰯のこと。あい(鮎・藍)に勝る・美味しいの意)
○壁(夢のこと。塗る(=寝る)と見えるから)
○お大名(癩病のこと。皆が恐々として道を避けるから)

※さあこの辺からもう分からなくなってきます。昔はこれが面白かったのでしょうが、今や知っていたら凄いという教養に近いレベルですね。

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