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味わい深い憧れるおじいさん

仲良しにしている不動産屋さんの紹介で、畑を借りることになりました。
そこで出会った畑の大家さんが味わい深いおじいさんで、貸し借りにおける1時間程度のやり取りは中々に豊かなひと時でした。

待ち合わせ場所は大家さんが営む住宅街にひっそりと佇む喫茶店。
そうなんです。畑の貸し借りの打ち合わせ場所が自分が営む喫茶店なのです。
この時点からすでにちょっとカッコイイ。

喫茶店は2席しかないコンパクトな造りになっています。小さい中でも40種くらいの豆が売られていたり、8種のコーヒーを飲み比べられたり、シンプルでいて豊富な体験ができる場所でした。
その小さな喫茶店のカウンターで働くおじいさんが今回の大家さんで、大体70歳後半くらいの少し背中が曲がっているけれど、パリッとした黒のベストを着たダンディなおじいさんでした。

カウンターにかける息子

おじいさんがカウンターで豆を挽いているときに、「ちょいちょい」と私たちを呼び、そっと1粒挽いた豆を手渡します。

「噛んでみてください」

と、言うのでおそるおそる豆を噛んでみると、引き立ての珈琲を淹れているときの香りがふわっと広がります。
豆を噛んだのは初めてだったので、新鮮な気持ちでした。

マチュピチュという珈琲

その後は畑の契約の話はそこそこに、おじいさんの話を少しお聞きします。
おじいさんは市内の製造業で務められた後、コンビニの経営をして、今の喫茶店を拓かれたそうです。
もともとは先祖が農業をしていた時期もあったため、農地や土地をいくつか持っている地主さんでもあるようでした。

おじいさんはときおり「自分が話しすぎているかもな」と考えられているような雰囲気でちょっと黙っては、こちらの顔色を見ながら興味深い話を続けてくれる、心地よいおじいさんでした。

小さい中にも好きなものが散りばめられた箱庭のような空間に身を置きながら、珈琲店の店主を営む。
「こういう将来は良いな」と思えるおじいさんでした。

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