2022年11月に思ったこと②

●アイアンマン
ロバート・ダウニー・Jrが演じる映画「アイアンマン」ではなく、ウクライナ鉄道の関係者はこのように呼ばれている。
戦時下の今、ウクライナ鉄道の職員は、24時間体制で復旧活動や人命救助を行っている他、経済復興のための穀物や鉄鉱石の輸出、更に、ウクライナ国内での食料品やその他物資の輸送、前線への武器輸送などを手掛けている。こうした鉄道関係者の活動はロシアのミサイル攻撃の標的となっており、常に危険と背中合わせとなっている。
彼等の絶え間ない活動なくしてウクライナの復興はあり得ない。言い換えれば彼等はウクライナの勝利のみならず、ウクライナ復興の最大の功労者と言える。
もし戦争という長いトンネルから光が漏れてくるとしたら、それはウクライナ鉄道のヘッドライトに違いない!と言われている。
 
●がんこ親父
先日、ウクライナの鉱山関係者が出張でワルシャワに来ていた。我々との打ち合わせが目的の一つであったが、打ち合わせの後、市内のレストランで晩餐会となった。
私と同じくワルシャワに避難しているウクライナ人女性のスタッフが、晩餐会の帰り道でボソリと「久々に昔のウクライナ人を見た」と言った。
どういうことか聞くと、1990年代頃まではウォッカを飲みながら豪快に笑ったり、大声で話したりする昔ながらの「おじさん」が多かったが、最近は滅多に見ないとのこと。
ウクライナでもデジタル化(?)の流れの中で、都市部などでは人の考えや行動もスマートになっており、昔気質の人が減っているらしい。この女性スタッフもドニプロ市の出身であり、今回初めて田舎町の鉱山関係者と会ったとのこと。
寺内貫太郎や星一徹のような「がんこ親父」は日本でも滅多に見なくなったと言われているが、ここウクライナでも絶滅危惧種のようだ。

●キキーモラ
スラヴに伝わる、働き者の味方とされる女性の精霊。
諸説あるようだが、この精霊は「家憑き妖精」と言われており、部屋の隅や地下にひっそりと佇んでいて(日本で言うところの座敷童子に当たるのだろうか)、夜中に音を立てて騒ぐとされている。その一方で、家の人が働き者の場合には、夜中寝静まったのを見計らって掃除や糸紡ぎなどをこっそりと手伝うとも言われている。
ウクライナでは多くの年金生活のお婆さん達はウクライナ軍兵士のために寝る間を惜しんで冬用の編み物をしているとのこと。中には90歳を超えたお婆さんも戦場に出ている孫のために編み物をしており、そんな姿が「キキーモラ」に例えられているという。
見た目には決して嬉しいと言える姿ではないが、少しでも役に立ちたいという気持ちを感じるとともに、その強い気持ちが「キキーモラ」と重なっているのだろう。

キキーモラのイメージ図(Wikipediaより)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?