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中島聡さんへの質問⑤「日本のオフショア開発事情について」

※「週間Life is beautiful」のFAQコーナーに筆者が送った内容です。中島さんからの回答を頂けたらその分を追記します。

5年ほど前から、東南アジア(主にベトナム)に日系企業が続々と進出し、「日本のIT技術者の仕事が奪われるのでは?」と業界内で心配されていましたが、実際にはそこまで日本のオフショア市場は伸びていないようです。

オフショア開発に関わっている知人に直接話を聞きましたが、言語や文化の違いから来るコミュニケーションの難しさやブリッジエンジニアのスキル不足、成果物の精度が安定しない等の理由から、「単価が安い」以外のメリットをオフショアに見出すことができず、日本企業が、仕事を依頼することに前向きになれなくなっているそうです。

オフショア開発市場が伸びていないのは他の国にも共通する課題なのか。それとも日本特有の現象でしょうか。そのあたりの事情をお聞かせください。

<現地でオフショア開発に携わっていた人間の声>
・現地スタッフのITスキルが高くない為、高単価(=専門性の高い)の仕事を請けられない
・集団退職や勤怠管理等、現地スタッフのマネジメントコストが高い
・ブリッジエンジニアのスキル不足(優秀な技術者は日本の高単価な案件を選ぶ)

<日本からオフショアを依頼する側の人間の声>
・納品物の質が高くない。安かろう悪かろうになってる
・ブリッジ役の人間との意思疎通が(たとえ日本人相手でも)円滑にいかない
・日本に比べれば単価は安いので、品質さえ確保されれば利用したい。


中島氏の回答

オフショア開発で苦労しているのは米国も同じです。米国の場合、英語を喋るインドというアウトソース先があるだけ日本よりは有利ですが、文化と時差の壁を乗り越えてアウトソースするのは簡単ではなく、必ずしも額面通りに安くなるとは言えないのが実態です。

私の会社(UIEvolution/Xevo)でも、一部の仕事をインドの会社にアウトソースしていますが、担当者によって当たり外れがあるため、本当に節約できているかどうかは疑問です。しかし、急に仕事が増えた時のためにアウトソース先を持っておくことは便利なので、その意味でも普段から付き合っておくのは良いという考えです。

日本のように、どこの国とでも言葉の壁があり、かつ、勤勉な労働者が確保しやすい国で、海外にアウトソースする意味があるかどうかは疑問です。マイクロソフトのように、現地に子会社を作り、そこで人を育てて行く(つまり、アウトソースではない)ぐらいの覚悟ならば良いですが、安易なアウトソーシングは危険だと思います。

#ITオフショア
#東南アジア

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