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中島聡さんへの質問①「これからのITプラットフォームについて」
「誰も気付いていないTilTokの本当のイノベーションを語る」
>YouTubeは結局、パンピー(一般人)をクリエイターにすることはできなかった。しかしTikTokは、誰しもがクリエイターになり、自分のパッションやクリエイティブな創造力を存分に発揮するような世界を実現しようとしている。我々は今、一億総クリエイター時代の幕開けの真っ只中を生きている<
TikTokのような"有名人になる"までの時間が大幅に短縮されたサービスが出たことで、Youtubeとかtwitterでフォロワーを集める行為(=インフルエンサーを目指す)や、Google検索でサイトを上位表示させることの価値が相対的に下がり、反対にコンテンツの質を高めることが重要になったという記事です。
つまり、これからエンジニアとして情報発信をする人であれば、1から自分でブログを始めて数年かけてファンを獲得するよりも、(誰でも高いSEO効果が得られる)「Qiita」に良質な記事を投稿してその分野における認知度を高めてから、その後他のSNS(TwitterやYoutube)で情報発信した方が効率が良い(なんならQiitaだけで良い)という状況になってきているのだと思います。
「プラットフォームとコンテンツのどっちが大事か?」は昔からある論争の類ですが、それでも”誰でも1回は人前でバットを振れるチャンスがる”という今の状況は大きな変化であり、好意的に捉えています。TikTokを始め、こういう新しいタイプのプラットフォームが出現したことに対する中島さんのご意見をお聞かせください。
中島さんからの回答
PhotoShare を運営していた時にも同じようなジレンマに悩まされていたので、TikTok のアプローチは興味深く見ています。
PhotoShare の場合、Instagram と同じように一部のカリスマ性を持つユーザーが魅力的なコンテンツ(画像)を投稿することにより、コミュニティの盛り上がりが作られていたのですが、それだけだと、新規ユーザーのコンテンツにアクセスする人が少ない(コメントやイイネが付かない)ため、新規ユーザーがコンテンツを投稿するインセンティブが下がってしまうというジレンマがありました。
それを解決するために、PhotoShare の場合には、最新の写真(単純に投稿順に並べたもの)、人気の写真(コメントやイイネが多いもの、ただし24時間以内に投稿されたもの)という二つのタイムラインを提供しました。
TikTok のアプローチは、その二つのタイムラインを一つにまとめたものだと思いますが、人気のコンテンツの比率を高くするために、そうでないコンテンツは(乱数で)間引きをしているのではないでしょうか。
TikTok は、Youtube と比べると、一つの動画が短いし、検索などせずに、基本的には連続してダラダラと見るものなので、Youtube と直接競合するとは思いませんが、限られたユーザーの時間の奪い合いという意味では、Facebook、Twitter、Instagram などの他の SNS とも競合だし、もっと広い視野で見れば、ゲーム業界や音楽業界とも戦っていることになります。
私は、この手の新しいプラットフォームは次から次に出てくると思います。消費者は飽きやすいし、年齢ごとのギャップもあるため、一つのSNSが、長期間に渡って独占的な立場を維持するのは簡単ではありません。
ちなみに、TikTok の登場で、最も危機感を抱いているのは Youtube ではなく、Facebook だと思います。この手のサービスが急速に伸びるたびに、Facebook は、Instagram や WhatsApp のように買収せざるを得ない状況に追い込まれると思います。TickTok がまだ買収されていないのは、中国で成功したサービスであったからで(Facebook のサービスは、中国政府によりブロックされています)、もし同じようなサービスが米国で成功していたら、Facebook が黙ってはいないと思います。
(週間Life is beautiful 2019年1月15日号)