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旅の記憶

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#海外旅行

ラダックでのヒッチハイク

あの日、僕は、ラダックの大地を小さな原付バイクに跨がって進んでいました。 ***** ラダックとは、インド北部に位置する地域のことです。 そこは、ヒマラヤ山脈とカラコルム山脈に囲まれた高山地帯で、この地に暮らす多くの人はチベット仏教徒です。 チベット文化が息づき、チベット増院や仏像が古いまま残っています。 ***** 僕は「レー(Leh)」という街に数日間滞在しました。 その日は、ラダックの環境に慣れてきたこともあり、小さな原付バイクを借りて、1人でチベット僧院

麗江を流れる雪解け水

中国の雲南省。標高2400mの地に、ナシ族が暮らす古都「麗江」がある。 この街を見下ろすのは、5000m級の霊峰「玉龍雪山(ぎょくりゅうせつざん)」。 その名の通り、山の稜線は龍のようにうねっていて、龍の背には白くて美しい雪が積もっている。 玉龍雪山の雪解け水は、大地に染み込み、清らかな湧き水となってこの街に注がれる。 麗江の街には、「水路」がまるで迷路のように隅々まで張り巡らされていて、水路を流れる雪解け水がナシ族の暮らしを潤してきた。 水路に並行するのは、石畳の

サンパウロの雨

ブラジルのサンパウロで泊まった安宿は、玄関の扉が二重になっていた。 普通の扉と、鉄格子の扉。 僕は鉄格子の扉の存在に、どこかこの街の治安の悪さを感じていた。 ***** 大学生のとき、南米を1人で旅した。 夜行バスの長距離移動を終え、サンパウロのこの宿に辿りついたときには、既に正午になっていた。 僕にあてがわれた部屋は、カーテンがボロボロの薄暗い簡素な小部屋だった。それでも値段を考えれば充分すぎた。 長旅の気だるさを拭おうと、シャワーを浴びた。僕はいつもそうする

チチカカ湖上でのハッピーバースデー

南米のアンデス山脈。ペルーとボリビアの国境にチチカカ湖はあります。 チチカカ湖は、標高3800mほどの高地にあります。つまり、そこは富士山の山頂よりも高い場所です。 そのせいか、空が近くて、とにかく青い。湖も穏やかで、とにかく青い。青、青、青。 遠くに見える山の緑と、アンデスの人々が住む家のレンガ色を除けば、とにかく青い絶景が、視界いっぱいに広がります。 ***** 僕は、小さな船に乗って、この青い湖を進んでいました。 目指すところは「太陽の島」。湖上に浮かぶ聖な