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「旅する日本語展2020」に応募した「色節の島」。なんと、「最優秀賞(小山薫堂賞)」をいただきました! 想像だにしない出来事に、驚きと戸惑いを隠せませんが・・・。素直にうれしいです! 読んでいただいた皆様、旅する日本語展の関係者様、note編集部の皆々様をはじめ、関係する全ての方々に厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございます! 「色節の島」の余白を埋めるようで、こういうことを書くべきかどうか迷いましたが、振り返りを書いてみたいと思います。 ***** 「旅する
目を閉じると、心に浮かぶ景色がある。 平成から令和へ。 時代が変わったまさにその日。 北海道の利尻島は、日本晴れだった。 霊峰「利尻富士」を眺めながら、島を一周し、 最後に辿り着いた場所が「姫沼」だった。 針葉樹が生い茂る森の中、 あゆみを進め、視界が開けた先に「姫沼」はある。 沼のほとりに踏み入ると、空気は凜と澄みわたり、風は止み、音は消えた。 水面(みなも)は、穏やかで、鏡のように美しい。 見上げれば、荘厳にそびえ、迫り来たる「利尻富士」。 眼下には
人で賑わう5月のフェリー。 デッキの手すりにもたれ、清々しい海の風を頬で受ける。 海は凪。空も凪。 麗らかな日差しが水平線に降り注ぎ、光はさざなみに反射して無数に輝く。 浮き立つ気持ちと裏腹に、目指す島は、ゆっくりと近づいてくる。 新緑に萌える山は笑っていた。 乗客が皆、一斉に手を振る。 「ただいま」の人も、「おじゃまします」の人も。 手を振る先は、高らかに「大漁旗」を掲げた漁船の大集団。 島民総出の出迎えは、フェリーに併走する色鮮やかな漁船群。 風の光に