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旅の記憶

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#一度は行きたいあの場所

ラダックでのヒッチハイク

あの日、僕は、ラダックの大地を小さな原付バイクに跨がって進んでいました。 ***** ラダックとは、インド北部に位置する地域のことです。 そこは、ヒマラヤ山脈とカラコルム山脈に囲まれた高山地帯で、この地に暮らす多くの人はチベット仏教徒です。 チベット文化が息づき、チベット増院や仏像が古いまま残っています。 ***** 僕は「レー(Leh)」という街に数日間滞在しました。 その日は、ラダックの環境に慣れてきたこともあり、小さな原付バイクを借りて、1人でチベット僧院

色節の島

人で賑わう5月のフェリー。 デッキの手すりにもたれ、清々しい海の風を頬で受ける。 海は凪。空も凪。 麗らかな日差しが水平線に降り注ぎ、光はさざなみに反射して無数に輝く。 浮き立つ気持ちと裏腹に、目指す島は、ゆっくりと近づいてくる。 新緑に萌える山は笑っていた。 乗客が皆、一斉に手を振る。 「ただいま」の人も、「おじゃまします」の人も。 手を振る先は、高らかに「大漁旗」を掲げた漁船の大集団。 島民総出の出迎えは、フェリーに併走する色鮮やかな漁船群。 風の光に

サンパウロの雨

ブラジルのサンパウロで泊まった安宿は、玄関の扉が二重になっていた。 普通の扉と、鉄格子の扉。 僕は鉄格子の扉の存在に、どこかこの街の治安の悪さを感じていた。 ***** 大学生のとき、南米を1人で旅した。 夜行バスの長距離移動を終え、サンパウロのこの宿に辿りついたときには、既に正午になっていた。 僕にあてがわれた部屋は、カーテンがボロボロの薄暗い簡素な小部屋だった。それでも値段を考えれば充分すぎた。 長旅の気だるさを拭おうと、シャワーを浴びた。僕はいつもそうする

チチカカ湖上でのハッピーバースデー

南米のアンデス山脈。ペルーとボリビアの国境にチチカカ湖はあります。 チチカカ湖は、標高3800mほどの高地にあります。つまり、そこは富士山の山頂よりも高い場所です。 そのせいか、空が近くて、とにかく青い。湖も穏やかで、とにかく青い。青、青、青。 遠くに見える山の緑と、アンデスの人々が住む家のレンガ色を除けば、とにかく青い絶景が、視界いっぱいに広がります。 ***** 僕は、小さな船に乗って、この青い湖を進んでいました。 目指すところは「太陽の島」。湖上に浮かぶ聖な

ダライ・ラマ法王に会いに行った話

そうです。ダライ・ラマ14世。ノーベル平和賞を受賞したあの御方でございます。僕がダライ・ラマ法王に会いに行ったのは、かなり昔の話でありますが。 ***** きっかけは、大学生のときの1人旅です。当時の僕は、ひたすら遠くへ行きたくて、気がついたら、チベットの古都「ラサ」にたどり着いておりました。 ラサには、「ポタラ宮」という歴代ダライ・ラマが住んでいた宮殿があります。その宮殿の圧倒的な迫力、美しさ、荘厳な佇まいに、僕は心を奪われまして、それ以降、チベットの歴史や文化に興味