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国の推奨は妥当なのか?中小企業と配膳ロボットのリアルな現実について語る

ファミレスなどで仕事をする機会があるが、最近どうしても気になることがある。多くのファミレスで導入が進んでいる配膳ロボットの存在だ。

ガストやココスなど大手チェーンでも稼働しており、人手不足の解消という大きな課題に応える形で注目を集めているように見える。

しかし、ここで疑問がある。

「そのロボット、実際に生産性を上げているのだろうか?」

ロボットが料理を自動で運んでくれるのは画期的で、接客スタッフが手を離せない時間帯には助けになっているかもしれない(小さな子供には喜ばれるだろう)。しかし、現行の配膳ロボットが担えるのは“料理を運ぶ”という工程のみである。

飲食店の現場では、食後の片づけやテーブルの拭き上げなど、ほかにも多くの作業が存在する。これらをこなすには結局、人手が必要である。

私は大学生の頃にファミレスでウェイターのアルバイトを3年間やっていた。当時は、料理をテーブルに運ぶついでに空いた皿を下げたり、さりげなく客席の様子をうかがって追加注文がないか声をかけたりしていた。こうした「ついで作業」や「コミュニケーション」が現場における効率化や顧客満足につながることを肌で感じていた。

しかし、ロボットはあくまで配膳に特化しているだけで、食器を下げたりお客様と会話をしたりということはできない。さらに通路をロボットが通行するための広めのスペースも必要になるので、店舗レイアウトの制限が増えるというデメリットもある(実際に人間がロボットのために通路の端によっている状況だ)。

ちなみに、私は中小の飲食店で配膳ロボットを入れている店舗をこれまで見たことがない。最近は中小企業向けの「省力化投資補助金」にも配膳ロボットが含まれているが、導入は進んでいない。その理由は想像に難くない。

ロボットが稼働するには十分な通路幅が必要であり、設置スペースも確保しなければならない。加えて、ロボットの使い方を覚える人員の教育や定期的なメンテナンスも必要だ。さらに1台あたりおよそ250万円という価格は、決して安い投資ではない。補助金があったとしても、果たしてどの程度の期間で投資を回収できるのか疑問だ。

それよりもより多くのテーブルや席を確保して、一人でも多くの顧客を囲いこむ方が売上高に繋がる。

配膳の一部工程を自動化すれば、確かに「省人化」は達成されるのかもしれない。しかし、その副作用として接客の質が画一化され、サービス面での差別化が失われてしまう恐れもある。

特に、大手チェーンにはない細やかな接客が売りの中小店舗では、配膳ロボットを導入することで却って店の魅力が損なわれるリスクも否定できない。にもかかわらず、国が中小企業に対して画一的にロボット導入を勧めているのは、現場の実態をあまりにも理解していないのではないかと感じる。

将来的に技術が進化し、AIを搭載したロボットが空いた皿を下げたり、会話を通じて追加注文を取ったり、人間に近い接客ができるようになるかもしれない。そのときはまた状況も変わるだろう。

しかし少なくとも現状では、従業員とのコミュニケーションを楽しみにしている常連客が多いスターバックスコーヒーやコメダ珈琲のような店舗で、配膳ロボットが活躍する未来は想像しづらい。

何でもかんでも省人化すればよいというわけではない。店ごとに求めるサービスのあり方は違うはずだ。国が勧めるからという理由だけで導入を急ぐのではなく、自らの店舗が提供したい価値やお客様との接点をどう作りたいのか、その本質を見極めるべきだと感じる。ロボットは確かに魅力的な技術だが、その可能性を最大限に活かすには、現場のニーズと上手に噛み合わせることが重要なのである。

浮島達雄

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