だいたいいつも晴れている部屋、だいたいいつも晴れている絵。
パブロ・ピカソの壁画⁈ 世紀の大発見!
その発見者が、2人の男子学生ということが、ますます民衆を驚かせた。
壁画が見つかった場所は、林の中の小さな講堂のようなところで、建物自体が、がらんとした多目的ホールのようなひと部屋でできている。
建物の壁は平面でいわゆる四角形を4枚組み合わせたごく、一般的な形状で地味すぎず、派手でもなくどちらかというと、普通よりもそっけない外観をしている。
林に2人の少年が、連れ立ってやってきた。
見たところ歳は、15〜17、8歳くらいだろうか。
ひょろっとした痩せ型で肌は白く、スポーツよりも読書が似合うそんな印象だ。
2人は、目的もなさそうに林を歩いた後、そっけないつくりのプレハブ小屋を少しマシにしたような小さな講堂を見つけると、入り口から中へと入って行った。
休みの日、特に何もすることがない1日なのだろう。
あてもなく、ふらりと立ち寄った感じらしい。
中へ入っていくと入り口の扉とは別に、もう一枚バロック調の重い木の扉が2人を出迎えた。
その扉に手をかけると見た目に反して呆気なく、扉は開いた。
一歩足を踏み入れた、と思った。
確かに腕には、扉を開けた感覚が残っている。それなのに少年たちは、自分達がどこにいるのか一瞬、分からなくなってしまった。
扉を開けて建物の中に入ったはずなのに、目の前に広がるのは、何本かの木が、ポツポツと生えている姿で、ぐるりと見渡すそこは、紛れもない薄明るい木立の中なのだ。
その向こうに1人の男が、2人に背中を向けて座っていた。
ここは、建物の中なのか林の中なのか?
わけがわからない2人は、足元の地面が、人工的な床だということに気がついた。
ここは、間違いなく建物の中なのだ。
椅子や机などは何もなく、多目的ホールのようなガランとした小さな空間に男がひとり座っている。
じっと目を凝らしていると男がなにかしている。
林の中に何かを書いている?
林に書くことなんてできるのだろうか??
そんな疑問はすぐに消え、男が、まさに目の前の林を描いていることに気がついた。
2人の少年は、男に近づくと黙ってその手が、描きだす空間をみつめた。
そこから、男と2人の間にどんな会話がされたのか記憶にない。
ただ、この部屋の林には、空がなく、明るいのか暗いのか、晴れなのか雨なのか。天気や時間の感覚がないことは、覚えている。
ここは、だいたいいつも晴れている部屋で、その絵は、だいたいいつも晴れている絵だった。
少年は、男に聞いた。
「この部屋が、だいたいいつも晴れている部屋だとどうやったらわかりますか?」
男は答えた。
「君たちが、この絵をだいたいいつも晴れていると決めればいい」
少年たちは、うなづいた。
月日がたち、この部屋の壁画は、いつの間にか違う絵で塗り固められ、隠されていた。
少年たちは、すぐにそこだと気がつき、上に塗り固められた絵を 丁寧に剥がし続けた。
マスコミは、驚いた。
こんな少年たちが、どうやってピカソの壁画を見つけたのか??全く見当もつかなかった。
大人たちの問いかけに
2人は、ただ、そこにあることを知っていたから。とだけ答えた。
そんな明け方のまぼろし。