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髪を切る3の理由。

 2年ぶりに髪を切った。”地下鉄のベンチで15分も泣いた”りしないけれど。ヘアドネーションをするために伸ばしていた。今回ドネーションカットをするにあたり、是非があることも理解していた。でもそもそも寄付とか利他って自己満足だと思っている節が私にはある。

 2度目のヘアドネーションをしようと思った理由は3つある。
 1つ目は友人が開頭手術をすることになり、頭の毛を剃らなければならなくなったこと。
 この理由も是非が分かれるだろうことは、私が高校生の頃から心酔している鬼束ちひろさんが似たような理由で頭を丸めたときの世間の反応を思い出せば容易に想像ができる。
『金八先生』でもクラスメイト全員が頭を丸めて励ます展開があったと聞いたような気がする。「どうせ励ますために切るくらいなら人にあげちゃえばいいんじゃない?」という発想は短絡的過ぎるだろうか。
 2つ目の理由は、加齢によって生え際が後退し始めたこと。おそらくもう二度とヘアドネーションできるほど髪を伸ばせないというか、現状でもギリギリ成立してないヘアスタイルで過ごす羽目になっていた。生え際は後退しているのに後ろは長髪で結んでいるという、弁髪か、もしくは月代を剃っているかのような状態だった。

 しかし既にこの時点で矛盾しているというか、生え際が後退したことでヘアスタイルが成立していないと感じること自体が、頭髪がなくてはならないという価値観を強化してしまうものなんだよね。
 ハゲネタで笑いをとる芸人さんもいるにはいるけど、だいぶデリケートな扱いに変わってきている。当事者による自虐であっても、その人本人以外の当事者が傷つく可能性はある。非モテネタも含めて自己卑下のニュアンスに対して「そんなことないですよ」のカツアゲの構造になっている気配がする。

 他方で就活現場なんかじゃ清潔感のある髪型を求められる。男子も女子も量産型の髪型に落ち着いていく傾向がある。派手髪やスキンヘッドのまま働ける職場は一般的なのだろうか。今の職場はインナーカラーで緑とか入れてても何も言われない恵まれた職場である。
 そもそも髪自体になんの悩みがなくても理美容で切ってもらってリクエスト通りになれているのか。できあがりを見て意に沿わない髪型で生活する羽目になったり、美容室でセットしてもらったスタイリングを自力で再現できず、結果として意に沿わない髪型で過ごす羽目になったりする期間のなんと長いことか。
 もうそんなことで悩みたくないよ。ロン毛だろうが、禿頭だろうが構いやしないじゃん。自分で選んだ髪型で生活することにとやかく言われなければいいんだけど、「寝ぐせ立ってるよ」とか言われ続けるんだろうな。整容と美容の線引きはどの辺りだろう。

 書き忘れた3つ目の理由は、昔から歯並びと髪質だけは異口同音に褒められたこと。
 他人から羨まれることなんてほとんどなかったからとても嬉しかったんだよね。同時に、一度も髪質を貶されたことないし。
 特定の誰かに直接あげられるわけじゃないけど、みんなが良いものだって言ってくれるものなら、必要としている人の手に渡れば有意義だし、喜ばれるんじゃないかと思った。


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