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公共の福祉としてのたい焼き

たい焼きってさ、ほとんど人間だって思うのよ。
「たい焼きにも人権を!」って話じゃなくて。
同じ型で焼いても羽がついたり焦げ目や空洞ができたりしてまったく同じにはならない。
型自体にもバリエーションがあるし、中身もあんこだけとは限らない。
外はパリッと、中はしっとりみたいな意外性があるものもある。
『およげ!たいやきくん』の歌が流行った頃からサラリーマンの終わりなき日常的なメタファーではないかなんて言及もあったけれど、画一的に見えて多様である点において、いみじくもたい焼きって人間だなって思うのだ。

たい焼きってご飯にはなりづらい。お土産にはなるけど特別な菓子折にも向かない。
あくまで買い食いの喜びというちょうどいい特別感だ。
天然か養殖かと対立を煽る見方もあると思うが、コンビニのチルドスイーツのたい焼きや駄菓子のぷくぷくたい、果ては韓国フナ焼きのプンオパンやポワソン・ダブリルまで。
たい焼きの心意気を持つものを全肯定していく、たい焼きグラビアの提唱者みなみんさんの心意気をこそ見習いたい。

3月に六本木たいやき公民館というイベントがあった。たい焼きは出来合いを提供する店もあるけどわりと焼き上がるまで店頭で待つことがある。
その時間を公共的な社交空間≒公民館に準えるのは納得的で。福祉に携わる身としてはサードプレイスの創出やアウトリーチの可能性として大変興味深かった。
福岡のたい焼き屋さんであるあまねやさんが六本木に来ていて、みなみんさんのSNSで拝見して「ぜひ食べてみたい」と思っていたので「これは我が祈願のうちにあり」。
アイスクリームと琥珀糖をトッピングした六本木いちごレアチーズは酸味と甘味、温かさと冷たさ、相反する要素が居合わせた多様性を表すまさに公民館。
そも〝たい焼きの心意気〟を持つものすべて肯定するみなみんさんが六本木たいやき公民館の一日館長を務めたことも示唆的で、振り幅の多いたい焼きの可能性を寿げる器は、公民館的福祉の心意気と接続されると考える。
一方そんなみなみんさんが未踏破のたい焼き屋さん情報を提供できたことを誇りに思うし「立派なたい焼きハンターですね」と言わしめたことは望外の喜びであった。今後も精進しなければ。
六本木たいやき公民館には二度足を運んだ。最初に行ったときカミさんから「嬉しそうな顔してる」と言われたのが印象的だった。二度目はカミさんとカミさんの姉の子どもを連れていった。美味しいたい焼きで家族が笑顔になってくれる。
一年前にはまだ家族ではなかった人たちと一緒にたい焼きを食べる幸せ。

六本木たいやき公民館のたい焼きは生涯ベスト級タイのたい焼きだが、北鎌倉に移転した初日に行った一丁焼きこたろうも生涯ベスト級である。
たい焼きが焼ける間に交わすふれあいや、そこで過ごす時間も含めて幸せだった。
みなみんさんとは需要がないのかもしれないって話もしたけど、たい焼きライターとかたい焼きコラムニストとしてたい焼きの記事書く仕事とかとれるようになりたい。とりあえずポートフォリオページを見れる状態にしないと。

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