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連載小説 メイドちゃん9さい! おとこのこ!3話「歯」Moonlight.

 伝統と文化の街、倫敦。
 この物語は、倫敦のちいさなお屋敷を舞台にお届けする。
 9歳のちいさなメイドちゃんと、お年を召した奥様の、1年間の日常です。

 今回は奥様(夜)のターン! メイドちゃん(昼)のターンは↓より。

「ごめんなさいねえ。ユーリったら、せっかくの新製品を」
「お気になさらないで、テーラーさん。私も見かけがおしゃぶりなのは改善せねばと思っていたんですの」
「でも、せっかくのいただき物を」
「まあ、テーラーさん! 私があなたにどれだけ借りがあるかお忘れ? あなたが説得してくださったとたん、あの男は親権をあきらめたし、養育費も滞りなく支払うようになったのよ」
「そんなこと借りなんて言わないで。私、そういうことは得意なの。それにね、あなたのお父様に、さんざんお世話になったのよ。なんせあの頃は、女の1人暮らしにとんでもなく冷たい時代だったの」
「またそんなことを。パパはゴミ収集の手続きなんかをちょっぴりお手伝いしただけですわ。それに比べて、私とあのDV夫はにっちもさっちもいかなかったのでしてよ」
 ドリー・ベネット。は、ふとつぶやく。「それにしても、あの養育費は何をして稼いでいるのかしら。いえね、無くても生活できることはできるけれど。ペーターの将来を思うとあった方がだんぜんいいでしょう? でも、あの男にできる仕事ってどういうものか、少し気になってしまいますの」
 ローザ・テーラーは微笑する。
「私も今一番知りたいことだわ。ああ、そろそろ仕事に戻らなきゃ。よい夜を」
「あら、出先ですの? テーラーさん、ご無理をなさらないでね。今日はもう夜中ですし、お宅はいつも夜中まで灯りがついていてよ。よい夜を」
 電話を切ったローザは、コンクリートに伏した男の髪をつかむ。
 顔を上げた男は「あいつは1本だったのに、俺は全部やられた」と、歯のない口でつぶやいている。
 そろそろ頃合い。
 ローザは質問する。
「あなたのお仕事の詳細は?」
 小さく独り言もつぶやく。
「まったく。私は武器商人で、なんでも屋さんじゃないのよ」
 
 おしごと おしごと 奥様はおしごと
 メイドちゃんはちっちゃいから もうねんね

  2020年7月9日

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表紙は花兎*様(Twitter:@hanausagitohosi pixivID:3198439)より。ありがとうございました。



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