怪獣の目的
(悪は悪である。宇宙人は侵略のためにやってくるし、恐竜は人間を見ると食い散らかそうとする。お菓子を食べると虫歯になるし、太っている人間はだらしない。固定概念は事実を歪める。)
ある日
夏はまさに最高潮となり、海岸は人でごった返す
人々を夏の暑さから解放するだけでなく、人の出汁をとった海は少しだけ美味しくなったと思われた
そんな素晴らしい夏の日だった
大都会の上空に巨大な影が現れた
裂けた口から覗く牙はぬらぬらと怪しく光り、赤い舌は長く伸びている
大きく広げられた翼は絵画でよく見る悪魔のそれである
大きく伸びた尾は太く棘は無数に生えている
体の全長は八十メートルはゆうに超えるか
まさに怪獣と言えた
多数の銃弾が怪獣に降り注ぐ
強大な爆発を伴ってミサイルが何発も怪獣の腹や背中に撃ち込まれた
怪獣は質量などないかのように宙に浮かんでいたが、爆発は確かに怪獣の体を抉っていた
怪獣は跡形もなく爆発四散した
人々はまた夏の美しい日々に戻っていった
夏の日の暑さに浮かれた集団幻覚であると、学者は語った
平和の使徒は打ち消されたか
この世界から一切の争いをなくし、格差も貧困もない世界が発現したというのに
禍々しくとも対話を通せば使徒の目的に気づくことができただろうに
仕方あるまい。本当に平和を手に入れたいものなど少数派なのだ
まわりまわって、世の中が幸せになる使い方をします。