
思い出は形として残り続ける
Apple Musicで東北ユースオーケストラのアルバムを見つけた。
坂本龍一が東日本大震災のあとに復興支援として行ってきた活動だ。
去る2019年、大学を卒業する年に記念として公演チケットを手に入れた私は、ついに坂本龍一本人を目の前にすることができたのだ。
前年、ドキュメンタリー映画の『CODA』を見たことがきっかけでのめり込み“いまこのチケットを取れなければ一生坂本龍一の姿を見ることができないかもしれない”と気合を入れてチケットの抽選に応募したところ、見事に当てることができた。
こういう経緯で東北ユースオーケストラの東京公演へ行き、5年後の今年、あれ待って、もう5年? ほんとに? 時が過ぎるのはやくないか……?
そう、つい先月Apple Musicで東北ユースオーケストラのアルバムを見つけたのだが、収録曲を見ていると衝撃の事実が発覚したのだ。
私が行ったのは2019年3月31日の公演で、アルバムにはその日の「ETUDE」が収録されていた。
なんだと???!???!! 混乱する頭、スマホの画面を凝視する目、固まる身体。まさか自分が行った日の曲が収録されてアルバムに入るなんて思ってもみないことだった。
坂本龍一の曲のなかで思い入れのあるものを挙げるとキリがないが、この「ETUDE」もそのひとつである。
大学4年生のとき卒論のため先行研究の論文を取り寄せて読む最中、私はずっと「音楽図鑑」を聞いていた。このアルバムは「TIBETAN DANCE」から始まり、ピアノの跳ねるような音がテンポよく論文を読むペースを作ってくれた。
(すごいよな音楽って、卒論では同じ映像に対して2つのちがう音楽を使って比較した印象評価実験をしてまあ予想通りの結果が出た、極端な曲を選んだのもあるが……)
そういうわけで、学生最後の年にお世話になりまくった曲が目の前で、しかも本人が演奏されているのを聞いて感無量だったのだ。
いざその「ETUDE」を聞くとぼんやりとしているが5年前の会場の雰囲気を思い出す。私は友人と行き、2階席のステージの左側に座っていた。すこし身を乗り出せば坂本龍一がピアノを演奏しているのが見えた。
さらに思い出す。曲が始まると同時に観客が手拍子を始め、私たちも一緒に手拍子をした。なんとアルバムには(当然だが)この音も入っていたのだ。聞き分けることなんてできないが、もちろん私が手拍子している音も入っている。
あの公演の中でオーケストラと観客が一体化して同じ空気を作っていたのは「ETUDE」だけだったような気がする、都合のいい記憶に塗り替えられているかもしれないが。
会場がひとつになった瞬間がこうして5年の時を経て形に残るとは……マジで生きててよかったな。
今年はエディに会ってからすごく調子が良いので、来年もこの流れに乗ったまま生きるゾ!!!!