冒険の果てにあるもの

 分かれ道を前にして、できるだけ行き止まりの宝箱が置いてある方を選びたいのは、ゲームの中だけだろうか。現実の行き止まりに着いてしまった時、私は何を思ってきたのだろうか。そこにあるはずの宝箱を見逃してしまっては、いなかっただろうか。

「人生やり込まなくてもさ」

 勇者になっても愚痴を溢す私に、その戦いを見ていた彼は言った。四苦八苦している私の顔も見ずに。横顔に表情はついていないけれど、少し馬鹿にした声色で。

「装備が弱くて死んじゃうかもでしょ」

 むっとして言った。

「お金半分になるだけだから平気だよ」

 画面を見たまま笑う横顔がなぜだか頼もしくて、一緒に冒険しているんだな、と変なことを考えてしまった。


(300字ショートショート『冒険の果てにあるもの』)

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