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イマジナリーラインを超えてゆけ
みなさん、イマジナリーラインを超えてますか~?
映像関係に関わったことがある人ならほぼ100%聞いたことがる「イマジナリーライン」。日本語では「想定線」と呼ばれる撮影テクニックの一つです。(詳しくはWikipediaとGoogle先生に)
イマジナリーラインは撮影やアニメ、CG制作の初心者向けの本で必ずと行っていいほど出てくるものですが、その中には「イマジナリーラインを超えてはいけない」と多々書かれています。Wikipediaにも若干柔和ではありますが、原則ライン超えはアウトであると書かれています。
原則的には、イマジナリーラインをまたいだカメラの移動は行わない。
wikipedia 「想定線」より引用
イマジナリーラインを超えてはいけないのか?
映像系の制作をしていると必ずと言っていいほど「こことここのカットはイマジナリーラインを超えている!直せ!」という『イマジナリーライン警察』のような人が居ます。(遊技機の映像なら業界の慣例として100%アウトなのは理解しています。)
では聞きますが、イマジナリーラインは超えていけないのでしょうか?
端的に言えば「超えてよい」のです。
(wikipediaにイマジナリーライン超えの方法が書いてありますが、こんなめんどくさい方法でなくても超えることは可能です。)
そもそもの発端
イマジナリーラインはなんのために発明されたのでしょう。
イマジナリーラインは鑑賞者の人が映像を見ている際に、人物の配置などがどうなっているのかを理解できるように、混乱をきたさないようにするために作られた原則です。
映像は鑑賞する者を時間的に拘束する(かつては、見直しのきかなかった)媒体である。イマジナリーラインとは、そんな映像を一度見ただけで理解できるようにするために発見された原則の1つである。
wikipedia 「想定線」より引用
ということは裏を返すと、混乱をきたさなければ超えてもよい、混乱させるためならむしろ超えるべきとも考えられます。
イマジナリーライン = 鑑賞者が混乱しないためのもの
混乱しないのであれば守らなくてもよいのでは?
あえて超えることがあってもよいのでは?
また、演出技法の一つとしてわざとイマジナリーラインを超えることもあるので、それも含めて見ていきたいと思います。
見せたいものがあるので一時的に超える
イマジナリーライン超えで最もポピュラーな超え方として、見せたいものがあるため都合上超えなければならなかったときというものがあります。
こういう場合はあれこれ悩むのをやめてライン超えしてしまいましょう。
ただし、特別な演出でもないので見ている人が混乱しないレイアウトを取る必要はあるかとおもいます。(見せたいもの以外も写しておくなど)
例として実写版「るろうに剣心」を上げます。
実写映画「るろうに剣心」において剣心(佐藤健)が敵と退治している際に左頬の十字傷を見せるカットを挟むためにイマジナリーライン超えをしています。(画像3枚目)
ここではアングル上隠れていた(わざと隠していた?)顔の十字傷を見せるためにライン超えをしています。
引用元:るろうに剣心
一時的にライン超えしますが、すぐさまもとの配置に戻り、説明的な配置のカットも入れ混乱を最小限に抑えています。
このように、どうしても見せたいものがあるのであれば、インサート的にライン超えカットを挟み、その後元のアングルや説明的なレイアウトを入れてあげることで混乱を防げますので、ライン超えは可能と言えます。
そもそも混乱しても良いから超える
アクションシーンをつなぐ際、立ち位置の混乱はそこまで問題視されません。かっこよさや動きのダイナミックさを表現するため、見ている人に混乱を与え激しい戦いが起きていると感じてもらいたいため、といった部分からライン超えをすることが多々あります。
こちらの例として実写版パトレイバー「THE NEXT GENERATION -PATLABOR- 首都決戦」を題材としてみます。
「THE NEXT GENERATION -PATLABOR- 首都決戦」ではアクションシーンでイマジナリーラインを超えています。(画像2枚め)激しいアクションシーンでのライン超えは珍しいことでもないので、そこまで気にせず超えてしまって大丈夫かと思います。
引用元:THE NEXT GENERATION -PATLABOR- 首都決戦
同レベルの人物で有ることを表現するために超える
ライン超えの特殊な事例の一つですが、戦っている二人の人物が同レベルの存在、鏡像のような存在のとき、カメラを同じレンズ、同じ高さで正反対の側から撮るという手法を取ることがあります。
これはレイアウトを同じにした上で立ち位置を交互に入れ替えることで、二人の人物が鏡像として存在していることを表す演出になっているため、割と特殊なライン超え法となります。
例として映画「THE MATRIX REVOLUTIONS」を題材とします。この映画の終盤の戦いでは、主人公と敵方のボスがお互いに陰と陽の性質を持つキャラクターであるとされているため、レイアウトにもそれが反映されています。
1カットごとに180度反転したカメラを使い、カットごとにイマジナリーラインを超えていきます。
引用元:THE MATRIX REVOLUTIONS
イマジナリーラインを大胆に飛び越えていく例ではありますが、このようにそもそもカメラを反対側に置くことに意味がある場合もあるのです。
使う場所は限られるかも知れませんが、知っておくとどこかで使える技法の一つだと言えます。
物語が違う方向に動き出すから超える
特殊な事例の一つとして、ストーリー展開に合わせてライン超えをすることがあります。
これは一つの戦いが決着した際や、人物同士がお互いの心を通わせた際など、物語の分岐点になるポイントでわざとライン超えすることで、状況が変わったことを意味する演出となっています。
「機動戦士ガンダムUC EPISODE1」の冒頭シーンを例にとって説明をしてみます。
宇宙空間で2体のMS(ロボット)が戦うシーンがあるのですが、画面カミテ側に濃いめの緑色の4枚羽(バインダーが4つついている)のMS「クシャトリア」、シモテ側に薄緑色のMS「ジェガン」が配置され、戦闘中はカミシモが入れ替わることがないようにレイアウトされています。
戦闘の最後、4枚羽のMSが薄緑のMSを横薙ぎで両断した際に、一気にイマジナリーラインを超えます。(画像4枚目)このカットでこの戦闘が終わり、物語が動き出す合図となっています。
引用元:機動戦士ガンダムUC EPISODE 1
物語が大きく動き出す際や、告白がうまく行ったあとなどはライン超えして配置を入れ替えるようにすると、画的な変化と物語の変化がリンクするため、映像的に意味合いを補強することが出来ます。
まとめ
このようにイマジナリーライン超えは複数の方法論があり、超えてはいけないものではないことがわかります。ここで紹介した以外の方法もあるかと思いますが、超えることそのものは不可能ではありません。
見せたいものがあるので一時的に超える
そもそも混乱しても良いから超える
同レベルの人物で有ることを表現するために超える
物語が違う方向に動き出すから超える
and more...
イマジナリーラインは「守っておくとわかりやすい」という一種のお守りのようなものなので、守るときは正確に、超えるときは大胆にやれると良いと思います。
みなさん、イマジナリーラインを超えてますか~?
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