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『悼む人』

【悼む人 著者:天童荒太】

『その人は誰を愛し、誰に愛され、どのようなことで感謝されていましたか?』
『悼む』という本来の意味は嘆き悲しむという意味であるが、この本で描かれる青年は人のことを心に刻み続けるという行為で意味を生み出していた。

『悼む人』ではそんな青年とその周りの人々に焦点を当てながら『生と死』、『愛』とは何なのかということが語られていた。

人は生まれながらにして種を残すだけに発達しただけの生物であり、原生動物と同じ細胞の生命力が人を生かしている。愛や夢のようなもので死を華やかに飾るということは、無意味なものに人が偶像を作り上げたに過ぎない。

死とはどんな人も経験するものであり、性的虐待、交通事故、自殺、殺害、病気など、誰かの死は日常的に報道されている。かたや、報道されない死は世間的に認知されていない。無意味なものなのか?亡くなった後に残るものは何なのか?
自分は死ぬ時にどんなことを考えるのだろうか、人生を振り返り満足するのか、後世に期待をするのか、それとも人に忘れられてしまうという恐怖を覚えるだろうか。
悼む人は亡くなった人を悼むことで、死に直面している人達に生きる希望を与えていた。所謂それが愛であり、
どんな人にも形は違えど愛というものは存在していて、それは、立場や視点、考え方や捉え方、自分というレンズを通すことで変化する形だった。固定概念や先入観、噂で誰かが嫌いとか気に食わないとかそんなちっっさいスケールの話ではなく、『生と死』、『愛』という壮大なものに焦点を当てることで人と人との間にある大切な部分を感じることが出来た。人は無意味なものに価値を生み出すことのできる素晴らしい存在だと思う。

少なくとも自分は、周りに興味を持って、辛い時や悲しい時に話を聞けるそんな存在でありたい。そんな周りにしていきたい。

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