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多分、大丈夫。はキケン。キャリア形成に影響を与える「正常性バイアス」とは

なんの保証もないのに、なぜか「自分は大丈夫」と思ってしまうこと、ありますよね。これを正常性バイアスと言います。バイアスとは、自分の考えの“偏り”のこと。けれど、キャリア形成をしていく上でのバイアスは厄介なものです。自分だけは大丈夫と思い込むのではなく、自分のキャリアに責任を持てるよう考え方を変えていきましょう。

皆さま、こんばんは。齋藤亜瑚です。

昨年に続き、今年もかなり自然災害の多い年ですね。各地で「想定外」かつ「100年に一度、50年に一度」の災害のニュースが流れていますが、昨年、大雨で地元の町に流れる川が氾濫危険水位を超えたと聞いた時の驚きといったら…。普段は本当に「小川のせせらぎ」という風情で、なぜ一級河川なのか? と思うくらいの川なのです。一人暮らしの母に「避難の準備をしているか?」と急いで電話し、ご近所が避難するときには必ず声を掛けてもらうようお願いするように言いました。

母はのんきなものでした。「心配性ねぇ、こんなところまで水が来るようになるなら、日本中が沈没するわよ」と。ただ、二度目に私が電話をしたときには、「一応ご近所にハザードマップを確認した人がいて、まだしばらくここは大丈夫だって言ってた」と。危機管理のための行動を起こす気力があることに少し安心したものです。

生き残るための最大の敵は、「自分はまだ大丈夫」と過信すること。自治体がいくら予算をかけて頑丈な堤防をつくろうと、その堤防が決壊しそうだと警報を流そうと、危険を感じ取らない・感じ取りたくない個々人の心の在り方です。

「自分は大丈夫」「まだこのあたりは大丈夫」と思って避難行動を起こさないでいるうちに、既に避難ができない状況に飲み込まれて犠牲になられた方がかなりいらっしゃったことは、読者の皆様も記憶されているのではないでしょうか。

「自分は大丈夫」という根拠のない自信が【正常性バイアス】に!

うすうす危機が迫っていることを感じていても、人はなぜ「自分は大丈夫」と思ってしまうのでしょう。
人は「自分にとって都合の悪い情報を無視しようとしたり、過小評価してしまうものだから」です。このような現象を【正常性バイアス】といいます。読者の皆様も何度かこの言葉、お聞きになったことと思います。

キャリアの危機管理も同じです。

変化の激しい時代と言われて久しいです。去年まで売れていたものが市場からあっさりと姿を消します。新しいテクノロジーのおかげで古いものは淘汰されていきます。私が新卒で入社した会社は大手メーカーの携帯電話製造部門を担っていましたが、スマートフォンの登場のおかげで今は影も形もなくなりました。
こういった状況は企業の危機管理の問題であり、本来経営者がまずは会社の舵をどのように切っていくか考えるべき事ですが、実際は個人が大きく影響を受けてしまいます。

事業縮小のリアルな影響を受けるのは従業員である

事業縮小すれば、希望退職募集や職種変換等が発生します。
私が派遣社員として二社目に勤務した会社も超大手メーカーでした。当時『構造改革』の名のもとにある地方の部門が閉鎖され、数十年製造ラインで課長・主任として頑張っていた40代、50代にパソコン操作(Excel,Wordの基礎です)を教えるのが、私に任された仕事でした。彼らはパソコン操作に慣れたのちに営業職に配置転換される予定で、いかにも慣れない手つきの彼らの様子に心が痛みました。


(その後1年もしないうちに、当時の私もあっという間に【派遣切り】に遭うのですが…)

今思えば、ああいった対応(半年以上PCを教えたり、営業職に配置展開する余裕があったと言えます)はまだ企業に体力があったからこそ出来たこと。当時よりも環境の厳しい現在は、もっと急激に退職を迫らざるを得ない会社も存在するのではないかと思います。

自分のキャリアはこのままではまずいかなと思っていても、何かアクションを起こすにはかなりのエネルギーを要します。自然災害のときと思考は同じで「自分は大丈夫」または「まだ大丈夫、しばらく危機は来ないだろう」と考えてしまうからです。この判断のほうが楽だから。今所属している会社で良好な人間関係を築いていれば余計そうです。

自分のキャリアは自己責任で

現に、このコラムでも「転職しなくても転職“活動“はしてみたほうが良い」「職務経歴書をつくってみるためのアドバイス」「キャリアの棚卸の重要性について」等など書かせていただきましたが、実際に行動に起こしてみた方はそれほど多くないのではないでしょうか。【正常性バイアス】がいかに正しいか、証明された形ですよね。

アメリカと中国の対立、韓国との関係悪化、香港情勢等、経済的にマイナスに振れる事象が毎日報道される中、今回のコロナ禍で、しばらく景気はガクッと冷え込んでいくと予想している人は多いですが、自分事に落とし込んで行動を始めている人はそれほど多くないと感じます。

自己責任という単語自体、私は本来あまり好きではないのですが、ことキャリアについては「自分のキャリアは自己責任」と強く意識することが大切だと感じます。会社に自分の将来をゆだねきった結果、変化に飲まれて会社を恨んでもどうにもなりません。結婚し、家庭を持っていれば辛いのは自分だけではなく、家族も巻き込むことになります。

常に、「明日会社がなくなったら自分のキャリアはどこに“売れる”か」「自分のキャリアの価値がどこにあるか」という視点を持ってキャリア形成について考えていきましょう。
そして考えるだけでなく、今度の週末に「キャリアの棚卸」をぜひ実行してみてください。

それでは、またお会いしましょう!

齋藤亜瑚

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齋藤亜瑚
よろしければサポートを是非お願いします。現在医療介護系の人材会社に所属しつつ、これまで経験してきたことを「転職しようと思ったこともないひとたち」「転職活動したことがないひとたち」が「転職せざるを得なくなってしまった」ひとに還元できるようにしたいと思い活動を始めました。