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インスタとヒーローズジャーニー
突然ですが「この人の動画見入ってしまう」といった経験はありませんか?
1日に数回以上、思わず指がスマホの画面に行き、ついタップして再生することがあります。特に、競合やコンテンツのリサーチをしている際に、よくやってしまうことも…。
実は、僕たちが惹かれる動画やコンテンツには、ある共通の構造が隠されているかもしれません。
それが、「ヒーローズジャーニー」と言われるものです。
ヒーローズジャーニーとは
![](https://assets.st-note.com/img/1717821789843-nZ0FY9uCQT.jpg?width=1200)
ヒーローズジャーニーとは、神話学者のジョセフ・キャンベルが提唱した物語の構造理論です。彼は、世界中の神話や民話を研究し、そこに共通するパターンを発見しました。
主人公が日常を離れ、冒険の旅に出て、試練を乗り越え、成長して帰還するという物語の流れです。要は、苦難にぶつかり、それを乗り越えてあすに向かっていく、といったイメージでしょうか。
一般的には、以下12のステップで構成されています。
日常世界:主人公が普段の生活を送っている状態。
冒険への誘い:主人公が冒険に誘われる出来事が起こる。
誘いの拒否:主人公は、冒険を恐れて一度は拒否する。
賢者との出会い:主人公は、賢者から助言や導きを受ける。
最初の関門通過:主人公は、最初の試練を乗り越え、冒険の世界へ進む。
試練、仲間、敵:主人公は、様々な試練に直面し、仲間や敵と出会う。
最も危険な場所への接近:主人公は、最大の試練が待ち受ける場所へ向かう。
最大の試練:主人公は、最大の試練に立ち向かう。
報酬:主人公は、試練を乗り越えた報酬を得る。
帰路:主人公は、日常世界への帰路につく。
復活:主人公は、最後の試練を乗り越え、生まれ変わる。
宝を持って帰還:主人公は、冒険で得た宝を携え、日常世界へ帰還する。
このパターンは、映画『スター・ウォーズ』や『ハリー・ポッター』シリーズなど、数多くの作品に見られます。アニメなら『鬼滅の刃』『ワンピース』『NARUTO』などにも、ヒーローズジャーニーは使われていますね。
インスタでの「ヒーローズジャーニー」は、上記12のステップよりは簡潔かつシンプルです。次章をご覧ください。
ヒーローズジャーニーが使われている投稿
![](https://assets.st-note.com/img/1717821958798-xkg2o0Ze3x.jpg?width=1200)
実際に活用されているであろうリールをいくつかピックアップしてみました。みなさんも、一度は似たような動画を見たことがあるのではないでしょうか。
上記のリールを見て、何か気づいたことはなかったですか?
それは、すべて「悲劇」から始まっているということ。一般的なヒーローズジャーニーの構成では「日常」から始まります。ただし、誰なのかわからない人の日常を載せたところで、興味関心を惹きつけるのは難しいと思います。
そこで、「悲劇」から始まるのです。衝撃的なシーンから始まれば、思わず見入ってしまいます。「どういう展開になるんだろう…」と、目を離さずにはいられないでしょう。
ユーザーの滞在時間が延びるため、アルゴリズム的にもポジティブです。バズる動画の出来上がりですね。
リールのヒーローズジャーニーは5つだけ押さえておけばOK◎
![](https://assets.st-note.com/img/1717822265258-4Gyx5m5GhG.jpg?width=1200)
一般的なヒーローズジャーニーは、12のステップで構成されていました。しかし、リールに転用するのであれば、一旦5つだけ押さえれば大丈夫です。
悲劇
挑戦
困難
努力
決意
さらに、上記5つのフレームワークを用いて、「退職」というテーマで、試しにAI(Gemini 1.5Proを使用)を活用してヒーローズジャーニーを作ってもらいました。
悲劇:
20年間勤め上げた会社から突然のリストラ宣告。信頼していた上司の裏切り、積み上げてきたキャリアの崩壊。絶望の淵に立たされた田中一郎(52歳)は、自らの存在意義を見失っていた。
挑戦:
打ちひしがれる日々の中、妻の励ましと子供たちの笑顔が一郎を奮い立たせる。「まだ終われない。新しい人生に挑戦するんだ!」
失意の底から這い上がり、一郎は職業訓練校の門を叩く。慣れないパソコン操作、若い世代との交流。戸惑いながらも、一郎は新たな知識とスキルを吸収していく。
困難:
再就職活動は厳しい現実を突きつける。年齢、経験職種とのミスマッチ。幾度となく突きつけられる不採用通知に、一郎の心は折れそうになる。それでも諦めない。家族のため、そして自分自身のため。一郎は己の経験と強みを活かせる道を探し求める。
努力:
日々の情報収集、人脈作り、自己PRのブラッシュアップ。一郎は寝る間も惜しんで努力を重ねる。そして、ついに小さなコンサルティング会社から内定の知らせが届く。給料は以前より低いが、一郎の経験と知識を評価してくれる会社だった。
決意:
新たな職場で迎えた初日。緊張と期待が入り混じる中、一郎は決意を新たにする。「過去の栄光にすがるな。ゼロからのスタートだ。新しい仲間と共に、自分の価値を証明してみせる!」
リストラの悲劇を乗り越え、挑戦と努力を重ねて掴んだ再出発。一郎は退職という試練を乗り越え、新たな人生のステージへと踏み出した。
内容はさておき、あとは動画素材があれば、割といい形になりそうじゃないですか?
また、自分の過去を掘り下げてみると、何かしらでヒーローズジャーニーの型に当てはまるシーンがあるはず。人生の転機を言語化すれば、ヒーローズジャーニーは、誰にでも表現できると思います。
ヒーローズジャーニーが流行っている理由
![](https://assets.st-note.com/img/1717822971855-lRGNL5l97C.jpg?width=1200)
「情報」のみで勝負するのは非常に難しい時代です。なぜなら、AIにも調べられるし、誰にでも発信できてしまうから。ユーザーとしても、情報コンテンツはお腹いっぱいですし、飽きているでしょう。
そのため、昨今では「情報」ではなく「情緒的価値」が重要とされています。情緒的価値を作る上で大切になのが「感情の揺らぎ」。つまり、ヒーローズジャーニー(物語)が有効となるのです。
ヒーローズジャーニーを活用したコンテンツを投稿すれば、感情の揺らぎを作り、共感を生み出します。たった1投稿で、その人のファンになるのも珍しくありません。
一度ファンになれば、長くウォッチしてくれます。もし、その人がサービスや商品を販売するとなったら、ユーザーはおそらく購入するでしょう。なぜなら、すでにファンになっているから。
ヒーローズジャーニーはあくまで手段
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結局、ヒーローズジャーニーは「ある目的」を達成させるための手段にしか過ぎません。
たしかに、ヒーローズジャーニーを用いたリールの多くは、高確率で再生数が高いです。30投稿も満たないうちに、1万フォロワーとなるアカウントも量産されています。
しかし、再生数が回り過ぎると、興味のない人にまでリーチし、エンゲージメントが下がってしまいます。商品やサービスが届けにくくなる可能性もあり得るでしょう。
「サービスやる=フォロワー伸ばそう=リールでバズらせよう=じゃあ、ヒーローズジャーニーだ!」といった短絡的な考えではなく、今必要なことを総合的に考慮して、トライするのがいいと考えています。