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Blue and dig【滲み】1200字
「青が深かったから。」 よし、これを泣いた言い訳にしよう。
そりゃ友達もまだいないから一人でにはなるけど、せっかくだしせっかくだからと毎週末どこかちょっとした観光地に出かける。4ヶ月は続けている。
月曜の短い昼休みに、同期の男の子に昨日はどこどこ行ってきたよ、とニコニコ伝えると、そこ行ったならあのお店行かなきゃー、とか言われる、
東京出身なのにネクタイ曲がってるくせに。
連日0時をまたぐ仕事でぐったりしていたけど、いまだ殺風景な部屋を快晴だから土曜の朝から「いってきます」小声を残して出る。
バダンっ。重めのドアだ。
部屋を出てから今日はどこ行こうか考える。足を止めるのは時間がもったいない気がするから、考えながらなんとなく電車に乗る。これは浅草線だから浅草に行こう。お寺とガイジン。ガイジンが持つ観光地図。パタパタパタっと器用に。ガイジンより装備が少ない私は、歩く。どっからどこまでが「浅草」なのかよくわからない浅草を歩く。真っ青な青い青空と大きな金色のオブジェ。その場で一周くるっと回ってみたのは、この辺がスカイツリーかなと思ったから。見えない。せっかくだしせっかくだから人形焼きでも買おうかな。やっぱりいいや帰ろうかな。
どこが駅かわからないけどここも浅草なのかな、東京はとなりの駅がちかい。交通量の多い道中で突然地下に続く階段を見つけたから、下りる。就活で買ってもらったリクルートのスカートがキツい。せっかくだからまだ履いてる。
突然の床屋。低い天井。沢山の人が歩く流れがあるからびっくりしてる暇もなく狭い汚い道を、進む。
ぎゅうっと並ぶ居酒屋や、逆さにしたビニール傘で雨漏り対策をする謎の店。おもしろいんだけれども怖さが勝ってドライアイ。地上とは雰囲気の違う地下の商店街。活気は無いんだけれども頑固さを押し売りされるような威圧感。
駅どこ?
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ここの濃い雰囲気、なんだか地元に似た気分かも。足のダルさと少しの怖さと駅が見つからない焦りから、遠足でおいてけぼりにされた小4の私が涙を溜める映像が再生される。せっかくだから。いや今日はいいや。なんか帰りたい。掘りコタツ入ってみかん食べたい。夏なのになんでなん。明るい上り階段を見つけた。見上げる。長い階段の先に青が染まってる。のぼる。なんで東京に来たんだっけ。就職したからげんろ。足が重いいやスカートがキツい。見上げて歩く、少しずつ近づく青空。青空が近づくと地下は真っ暗のように感じた。のぼりきれば今の謎な気分を抜け出せるような気がして息遣いが激しくなる。スニーカー持ってくるんだったわいね、東京人は履かないもんかと。のぼったら駅だろうからさっさと帰ろう。踵が靴ずれになってる気配。痛み、暑さ、いや苦しい。のぼりきると急に視界がひらけて、そこには青空と浅草があった。立ち止まってはぁはぁ。
汗が脇腹をつたう。妙に鼻息の荒い私にガイジンが不思議な目を向ける。
いや駅どこ。
口元だけぷっと笑う。なんだかおかしくなったから。
せっかくだしせっかくだから同期の男の子に人形焼きでも買って帰ろうかな。
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