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売り上げ前年比200%超えの奇跡 - しがないWEBライターの雪山滞在記 30日目 12月31日(火)

時計の短針が8のあたりを過ぎるころ。店にいたお客さんがパッと途切れる。店の外に人通りはない。いわゆる凪の時間だ。

「今年も終わりですね…」

突然、しんみりとした実感に包まれる。そうだ。バタバタと走り抜けた12月も終わるのだ。そして、今年ももう終わる。アルバイトのアキさんがそうですね、と優しい笑顔をこちらに向けた。

張り詰めていた糸がふっと緩む。外ではプリンスホテルのあたりから、いつものように花火が上がっていた。花火が上がる時間帯になると、店の前にはちょっとした人だかりができる。

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「花火見に来ちゃいました!」
先ほど店に訪れた5人組が楽しそうに花火を見上げていた。華やか雰囲気だが、気温は-8℃である。流石にさむい。部屋の中の照明を少し落として、見ることにした。

彼らが帰るタイミングでSAKE BASE NAEBAの2019年営業は終えた。
シャッターを下ろして、裏で一服する。ふぅと一息をついて空を見上げると、パラパラと雪が舞っていた。

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「というわけで12月の売り上げを発表します!」
ワタナベくんはニコニコとしている。昨日、今日でそれなりの売り上げがあった気がするから、それなりには行っただろう。

「去年の売り上げの200%を超えました! そして目標金額の160%です!」
ぽかんと口が開いた。開いた口が塞がらないとはこのことを言うのだろう。ちなみに店舗の運営チームは昨年からアルバイトで入っているアキさんと未経験者3人である。

営業時間だって去年よりも短い。そして、確かにお客さん自体は去年より全然減っているとのことらしい。にも関わらず、売り上げが2倍以上ということは客単価が倍以上になっている。

びっくりした。準備期間もほぼ9時〜5時で締めていたから、準備もギリギリ。開店3日前まではオープンできるかどうかすら怪しかったのだ。それがこんなことになるなんて。

「ほんとうにみんなありがとう」
そう声を張り上げるワタナベくんの目元にはうっすらと涙が浮かんでいるように見えた。彼だってメンバーが見つからずに、今年開けるかどうかの瀬戸際を踏ん張り続けてきたのだ。感激はひとしおのことだろう。だって奇跡みたいなことが起きたのだ。僕もうれしい。

「みんなで宴会しようぜ!!今日はなんでも食べていいよ!!!」
苗場の夜は長い。今年も良い年になった。来年も頑張ろう。

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