デザインは事業にどう貢献できるのか?
ラクスデザインチームのうえだです。
突然ですが、デザイン案に対して「費用対効果」という指摘をされたことありませんか?
例えば以下のような経験をしたことありませんか?
・こだわりの詰まったデザイン案を出すが、費用対効果が悪いと言われて却下される
・デザインの改善提案をするも、費用対効果に見合うのかどうかわからないと言われて却下される
試行錯誤して出した案が却下されるのは切ないですよね… ( ´_`)
そこで、今回はデザインと費用対効果の関係性を通して
デザインが事業活動にどのように影響しているかを考察していきたいと思います。
1.そもそも、なぜ「費用対効果」を問われるのか?
会社員なので当たり前といってしまえば当たり前なんですが、
あたらめてなぜなのかを考えました。
私たちデザイナーは
プロトタイピングをしたり、UIを設計したり、グラフィックを作ったり…と
実際の業務・作業として「デザイン」を行なっていますが、それはあくまで手段でしかなく、本来の目的は「事業を成功させること」です。
そのため、デザイナーが作成するデザイン案の実現そのものに価値があるのではなく、そのデザインがもたらす事業への影響にこそ価値があると考えられます。
よって、その影響の規模を測定するために「費用対効果」の算出を求められています。
2.どうやったら費用対効果を算出できるのか?
デザインの効果測定の方法として、CV数や機能の利用率を計測している例を見かけますが、正直これだけでは費用対効果の根拠として不十分です。
なぜならば、「事業の指標と紐づいていない」からです。
事業の指標とデザインの効果を紐づけて初めて費用対効果の検討ができます。
では、デザインはどんな事業指標に紐づけることができるでしょうか?
私たちが事業に貢献したいと考える時、
以下のどれかのアプローチができるとわかりやすそうです。
・売り上げを増やす
・利益を増やす
・コストを減らす
弊社のようなBtoB向けのSaaSサービスを扱っている企業における具体的な例を挙げてみたいと思います。
3.デザインで売り上げを増やす
売り上げは、契約社数 × 単価(1社あたりの契約料金)で算出できます。
ここでは、
「契約社数を増やす」ためのアプローチ
に絞って例をあげたいと思います。
(「単価を上げる」ためのアプローチは後述の「デザインで利益を増やす」で扱います)
契約社数を増やすというのは
・新規の契約を増やす
・既存の契約を減らさない
ということを意味しています。
それぞれに対してデザインでどんなアプローチができるかみてみます。
( アプローチ方法はあくまで例なので、他にもいろいろあると思います…!)
<新規の契約を増やす>
・ デザインの印象から好感を得ることで契約につなげる
本質的でないように思えますが、展示会やコンペなど複数のサービスと比較される場合には重要な要素になります。
<既存の契約を減らさない>
・ユーザーの要望をサービスに反映させることで継続率を上げる(顕在的)
・ユーザーの課題を抽出し、サービスを改善することで継続率を上げる(潜在的)
どちらもユーザーの抱える課題に対処することで、より良いユーザー体験を提供することができ、契約の継続に繋げることができます。
4.デザインで利益を増やす
利益は、売り上げ - 原価(コスト)で算出できます。
ここでは
「単価(1社あたりの契約料)をあげる」ためのアプローチ
に絞って例をあげたいと思います。
(「コストを下げる」ためのアプローチは後述の「デザインでコストを下げる」で扱います)
SaaS型のビジネスモデルでは
・オプションの追加などによるアップグレード
・データやユーザー数などの従量課金による積み上げ
によって単価を上げることができます。
それぞれに対してデザインでどんなアプローチができるかみてみます。
<オプションの追加などによるアップグレード>
・ オプションプランの契約を促す導線設計を行う
サービス内にオプションの紹介や利用を促すUIといった、アップグレードにつながる導線を増やすことができます。
ただし、ユーザーにとってノイズになってしまう場合があるので要注意です。
<データやユーザー数などの従量課金による積み上げ>
・ナッジデザインでユーザーの行動を促す
リマインド通知やバッジの表示といった、ユーザー行動を促す仕掛けを取りいれることで、サービスの利用量をあげることができます
5.デザインでコストを減らす
コストには原価と販管費というものがあり、
サービス開発においては以下のようなものがそれぞれに該当します。
・原価:開発に関わる人件費、外注費、サーバー費…etc
・販管費:販売やサポートに関わる人権費、営業やプロモーション費…etc
これらのうち、デザインで改善ができそうなものについてどんなアプローチができるかみてみます。
<開発に関わる人件費の削減>
・汎用的なUI設計によって実装工数を削減する
UIをパターン化することによって、使い回しができるようになり、開発工数を削減することができます。
・プロトタイピングによって不要な機能開発を防ぐ
実装前に要件を検証することができるため、本当に必要な要件に絞った機能開発を行うことができます。
<カスタマーサポートの人件費削減>
・わかりやすいデザインによってユーザーの学習コストを下げる
ユーザーのメンタルモデルに沿ったモデリングやUI設計を行うことで、「利用方法がわからない」などの問い合わせを減らすことができます。
・ユーザー自身が問題解決できるようにする
ヘルプやマニュアルへのリンク、プリセットやチュートリアルなどのユーザーの自発的学習をサポートする機能をサービス内に盛り込むことでユーザー自身で問題解決できる環境を提供することができます。
6.最後に
今回、デザインと事業というテーマに対して
費用対効果という視点でデザイン活動を紐解いてみましたが、
本来デザインは、事業だけでなく、働く人や組織全体にも影響を与えるものだと思っています。
また、新たな気づきやイノベーションを生み出すためには、枠に捉われない自由で挑戦的な活動が必要だと思うので、デザイナーの活動全てを費用対効果で評価せよというのではなく、
むしろ、そういう余白を許容してもらうためのツールとして費用対効果という考え方を活用できれば良いのではないかと思っています。
※ あとがき
おまけで、この記事を書くに至った経緯について。
先日弊社で、開発者向けの財務勉強会が開催されました。
そこで、事業を取り巻く様々な指標について学ぶうちに、自分の視点が下がっていたことに気づきました。
私は社会人人生の大半を体育会系のスタートアップで過ごしていたのですが、当時は、小さい会社で一人一人が組織を創っていかないといけないという状況だったため、自分の業務が会社の業績にどう影響するか、業務と事業の成果を結びつけながら働いていました。
それから転職をして、ある程度規模のある企業に勤めるようになり、
だんだん自分自身の職務範囲が限定的になっていき、
事業や会社全体の数字を意識する機会が減りました。
結果的に自分の身の回りの数字にばかり目がいくようになり、組織視点から個人視点になっていたように思います。(反省)
私の職務は「デザイナー」ですが、それはあくまでも事業や組織を成功に導く手段の1つでしかないので、それを見失ってはいけないなと、改めて思い直し、この記事を書くに至りました。
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