「FUTURE」

1984年に生まれました
ジョージ・オーウェルもびっくり
旧家、長男、B型のBIG3
ていうか時代はまだまだ昭和
どうかしたら導火線がみじかくなる大人に
圧し潰されないよう必死に掴んだ言葉たち

それがテーブルを蹴っ飛ばしケーブルとなって58へつづく九十九折り
千には九百ばかし足りないが、握るデクノボウを馬鹿にしたことはないぜ
泣いて笑って無表情でいて　一定期間を過ぎると人間の脳細胞は死滅してくらしい
日々の暮らしがたとえ単調でも足元だけでいい、起こせデモクラシー
　　

Back in the dayものじゃもう見えなくなったゴール
壊れた投射機のその先、うっそうと流れるエンドロール
ねえ、FUTURE
ぼくに語り残せるほどの過去はあったかい
これは血を流さないだけに残酷なあたたかいたたかい

夏休みはしゃぎ取っ組み合う妹弟ら
居間の隅ほっぽりだされたリモートコントローラ
きょうはこのあたりにしようか
とっくに齢をとってしまった今わかる
人生に消化試合はない
　

1984年に生まれました
2023年もどうしてだか人間のかたちをもち
世に憚れない程度に息をするだけの希望に縋っています
不確定な生活　母親は言った「営業係長にするため育てたわけじゃない」
かけがえのない一度きりをかけちがえてもこの指がボタンにはのびない
野比のび太とエンカウントした猫型ロボット
とらえどころのない隣人愛だって骨の髄から軽々に信じたい
新時代の心技体なんて知ったこっちゃない
ぼく、まだ、うたえるよ？

　　

ねえ、FUTURE
もしも車が空を飛ぶようになってもさ
ぼくは裸足で地べたを這いずりたい
ねえ、FUTURE
泥だらけの膝がどんな顔で笑っても
ぼくはぼくとして泣くことをやめられない
ねえ、FUTURE
いつか子どもが生まれたとしたら
それが2000何十年だろうと10秒で名前をつけてやる
ぼくの仕事なんてそんなもんだから
でも、これこそがぼくにしかできないことなんだ

ねえ、FUTURE
来週あのアイス30パーセントoffだってよ
幸福は溶けやすいけど詰将棋はいまでも解けない
ねえ、FUTURE
好きとか嫌いって感情を忘れるまえに
いますぐきみを連れ出したい
安っぽい、しみったれた、汚い居酒屋でいい
そこでぼくの食べられない塩辛やピータンを頼むきみと
きみの苦手なちりめん山椒を囲んでパーティをしよう
ねえ、FUTURE
ねえ、FUTURE

　　

1984年に生まれました
そして、いま、あなたの目の前で息をするだけの希望です