ポエトリー・ナイトフライト寸評(第3期第2回)

第3期2回目。
優勝は山本夜更(ex.ヤマモトケンジ)。
出場者はじめ何人も異口同音だったけど、納得の優勝。
それが「神懸かっていた」とか「ハマった」ではなく、
純粋な言語表現の勁さによるものなのがすごい。
しかも、彼、「詩のイベントはじめてなんでたのしみですー」って言ってたミュージシャン。
先月も「行きたいんですけど、吾妻光良のライブがあるんで……」って言ってた根っからのミュージシャン。

今回、またしてもエントリーがあまり多くなく、
ズサァ(人狼用語)が数組いた(ありがとう)けど、
おもわず「このままではやばい」とトチ狂って主宰のくせ、
自分も出場してしまったわたしです。2位(空気読め)。

ただ、それでも山本夜更とはだれかの思考回路がショートして
お札を投じるとかしないかぎりひっくり返せないほどの差があり。
やっぱすげーわ。けんけん。

さて。
(以下は順位と関係なく、順不同。5分×2周で催行)

■川原寝太郎
さすが、というひとことでは失礼にあたるかもしれないけど、
もう善悪じゃなく「なにをやっても川原寝太郎」の域にあるので、
本人は逆にやりづらい部分を感じたりしてるんだろうか。
(ぼくはそうなりかけて非ラップ的な頭韻と奇数韻重視の押韻にシフトしてる)
これは寝太郎だけの話じゃないけれど、
ある意味「顔で圧せる」ようになると難しいことも増えるとおもう。
安定安心の、たとえばわかりやすい作者としての思想信条とか、
「これしかやりません」タイプはまた別かもだけど、
ネタの内容重視なので、どうしてもその精度であったり、
パフォーマンスそのものの決まり方で損引いちゃうときが。
とはいえ、やはりこのひとの凄味は、
「一発勝負なら一番入れれる(勝てる)かもだけど、番勝負になったら勝てない」
ってかんじを自然と醸しているとこだと感じる。

■バード
PUB VOXhallの常連で、なぜか茶道にめちゃくちゃ興味をもつ若者。ぼくのことを「choriにして」って言ってるのに「明史さん」と呼ぶのやめよし。
ふだんは声も小さいしコミュ力(というよりかは表現力)に乏しいのが、
今回スラム初出場だけど、あっ、板の上になると(いい意味で)ひとが変わるやつ、
ひさびさに観た、ってこっそりうれしかった。
詩自体、朗読自体は未成熟な点が多々あれど、
堂々たるステージだった。
なによりいいのは、場の空気を「読む」「拾う」のではなく、
「なんとなく言ったことが場の空気になる」ところ。
才能だとおもう。
これは続ければ化けるんじゃないかな。
えらそうに聞えたらごめんなさい。
彼とぼくの関係性のうえでこういう言い方をしているのでご寛恕を。

■たことアルミ
前回出場してくれた的野町子(アルミ)とたこのユニット。
1周目のトングをパーカッシブに使ったパフォーマンスが、
ただ小道具を使った、って枠をこえて、メリハリと意味性がちゃんとついててかっこよかった。
ひとつだけ惜しむらくは、とても視覚的、映像的な表現なのだけど、
テキストよりそっちのほうが鮮烈に残ってしまったところで。
「トング使ってたあのユニットよかったなあ」はあっても、
「どんな詩だったっけ?」が薄れかねないかんじはした。
いいかんじにラリーが続いていて、その心地よさに、
ことばがすこし追いつけなかったかもしれないです。
とはいえ個人的にとてもすてきだとおもった。
(スラムにありがちな)アイデア勝負に淫しない感も。

■川島むー
「This is a chair」すばらしかった。
演劇畑のひとがかならずしもエチュード向きかというとそうではないにせよ、
むーさんは根本的な表現、それは言語であり発声であり身体であり、のクオリティに安心感がある。
前回「そこから突き抜けないときが」と書いたけれど、
昨夜はがっつり「川島むー」のきわどさやエッジが立っていたとおもいます。
ただ、結果(3位までは発表している/そこに入らなかった)には、
相性みたいな部分も影響したのかな、と。
むーさんって「すっごいうつくしいパー」という感覚で、
チョキ系が多かったので、そうなるとたとい精度の差があっても客席や審査員の評価で差っ引かれちゃう気がする。
でもこういうタイプのポエトリー・リーディングがもっともっと評価されてほしい。

■アオイネムリ
実力者同士の1MC1DJ的ユニット。
もともとお客さんで来てくれてたけど、
「エントリー少なそうなら……」と漢気出場。
やっぱり、声の通り方っていうのがあって、
単純に「声(量)が大きい」ではなく、
ことばと音とリズムのバランスがぴったり合致してはじめて「通る」。
内容そのものはややエモ系で好みは分かれるかもだけど、
お手本みたいなパフォーマンスだった。
実のところ、ぼく個人の勝手な趣味として、死ぬほど大好きか、といえば、
それほどまで「わっしょーい!」ではないんだけど(ごめん)、おぎなってあまりあるくらい表現としてうつくしい。
MCが即興で某曲(ナイトフライトというか京都にゆかりのある)を
引用してたのもめちゃくちゃハマってた。
とことん信頼できる演者だな、と素直におもいます。
やっぱり技術は裏切らないし、ちゃんと技術を届けられることは尊いよ。
また観たいし、作品もぜひつくってほしい。

■山本夜更
圧巻でした。
現場にいた面々にはそれだけでもう充分伝わるとおもうけど、
そうじゃないひとにすこしでも空気や内容を、ってのが寸評を書く意味なので。
1周目、5分のなか、ぴったり1分ジャストのキレッキレの朗読。
(※もっかい言うけど彼は詩のイベント初体験のミュージシャンです)
あれは「戦い方」としてすばらしく上手だったし、
2周目で5分に2編突っ込んできたのとの対比も鮮烈だった。
ストラテジーもタクティクスも「ようわかってるやん」のさらに上を行っていて、
正直、この夜のけんけん(夜更)にもし勝てるとしたら、
それこそ上田假奈代、ジュテーム北村、桑原滝弥、馬野幹(敬称略)クラスを呼んでこないと、
ちょっと厳しいってくらい鋭利で、でも豊穣で、たしかな「耳目をひらかせる」温度感があって、すごかった。
ミュージシャンとしても大好きだけど、
いや、ガチで詩人、てか言語表現者としても世にはばかってほしい。
ほんっとうにすごかった。
もう一回言います。
圧巻でした。
それも、20年以上スラムやオープンマイクに出たり観たりしてきたぼくが言うので、
(ってのはマウントおじさんな意でなく、のべ数千人以上見てきた立場のこの口が言う、マジでやべえという)
まちがいないとおもいます。
来月のチャンピオンステージはギター弾くとのこと!
歌ももちろんいいけど、個人的にはそのうえでの朗読聴きたいなあ。

■chori
自分です。2位!悔しい!
けれど、順位は一緒でも去年のKSJ大阪みたいな悔しさはなく、
山本夜更がとことん突き抜けてたから、うれしかったし、
主宰が(いくらエントリー少ないといえ)出るのってどやねんとはおもうけど、
グッドルーザー、アンダードッグとして最低限の仕事はできた。
やる詩もひとに選んでもらって、即興もまじえてだけど、
こんだけやってきたのにまだまだ巧くなれるって手応えがあった。
やっぱりぼくは、詩が、ポエトリー・リーディングがほんとにすきです。
でも、次回以降は出ないで酔っぱらいながらみんなを観ていたいです(切実)。

ゲストのpopi/jective、チャンピオンステージのFJひねくれもんにも言及しようかな、とおもったけど、
スラムとおなじ目線で語るのはまたちょっとちがうので(持ち時間も)、
そこはtwitterですこし書いたし、ここでは措きます。
でもめっちゃよかったなあ。
20分、15分でなくて30分でも余裕で「いえーい!」ってなったであろうパフォーマンス。

次回は6月25日(土)、またPUB VOXhallでお会いしましょう!
ゲストは歌人・橋爪志保。チャンピオンステージは山本夜更。
ぜったいたのしい。
エントリー(事前ではなく当日会場にての受付)、ご観覧、お待ちしてます!!


 

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