「詩人でない」

詩人でない
とき
ずいぶんとついてるな、ておもう
おれたち
詩人でない
たりかなしんだりしない
ただそよ風のようにばかげた横貌して
突っ立っているだけだ
し、それがいちばん気持ちいい
ぶんに地崩れしてゆく、時空のふたつみっつ余裕でこえ
ぼく、まだうたえるよ?

詩人でない
と、フライとお見合いする外野席
みがかれたいしに手垢まみれダイヤモンド
白昼堂々アル中の酔っぱらい
みよ、あれがえい、えん、マシンガン、だ、だ、だ、だ
をこね練り上げてハーゲンダッツはとける
かけられもしなかった呪文に似ていた
詩人でない
ふ、わり、三連符、店舗前道路に正常位でちゅうしゃする
いちがわらう
らからわらわらとわきいずる悪鬼羅漢、ジャック・ラカン、こらもうあかん
ハイでっか?退屈には三種類ある
ハイデガーもサイエンスデッカーもにっこり
だれかを隣席に待ちながら
一郎、二朗、三郎のくたびれたシャツのしわに夕陽落ちなむ

詩人でない
ようにみえて
その実、詩人でない
きみがかかえる不安がいつ縮んでしまわないか
知人ともひとごととも遠い場所まで
黙りこくったまま歩をすすめないか
母国語をときおりはなれることに慣れてしまいやしないか
それがぼくにとっての新鮮なふあんにそだつ
その実、と書いたのは
そのじつ ではなく そのみ と訓む
見飽きたほど網膜と毛細血管を灼くちいさなひかりが
このまちのうすよごれた奇跡を
なんなしに拾ってきえる


   

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