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裏切りの果て、絶望の淵で

二十代の美優は、またもや新しい男と再婚した母親、子に振り回されていた。
物心ついたころから母は男を渡り歩き、家庭は常に不安定だった。
朋子がまた新しい男を連れてきて結婚すると言ったとき、彼女はもう何も言う気になれなかった。

義父となった男、雄一は、表向きは誠実で落ち着いた雰囲気を漂わせていたが、どこか裏の顔を隠しているような不気味さがあった。
美優は彼に対し、どうしても好意を抱くことができなかった。

そんな中、美優は職場近くのカフェで働く一人の男性、啓介と出会う。
穏やかで、どこか影を持つ彼に、美優は自然と惹かれていった。

毎日のようにカフェに足を運び、少しずつ距離を縮めていく。
彼もまた、彼女の中にある痛みや寂しさに気づき、優しく寄り添った。
彼らの恋は、まるで過去の辛い記憶を塗り替えてくれるかのように、温かく穏やかなものだった。

やがて二人は結婚を決意し、美優は初めて「安定した幸せ」を手に入れられると思った。
結婚生活のスタートにあたり、経済的な理由から、啓介は美優の実家での同居を提案する。
美優は戸惑ったが、啓介の強い意志に押され、母と義父の住む家に一緒に暮らし始めることになった。

最初のうちは順調に見えた。
啓介は義母の朋子とも礼儀正しく接し、家庭内にぎこちなさはあったものの、どこか幸せな空気が漂っていた。
しかし、その幸福な日々は次第に変わり始める。啓介が義母と話す時間が増え、彼女に向ける視線が微妙に変化していくのを、美優は薄々感じていた。

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