ネタをネタとして楽しむ―廣田龍平著『ネット怪談の民俗学』早川書房 2024.10
本書は、90年代末からインターネット空間というフィールドにあらわれた怪談(掲示板やサイトへの投稿)を、民俗学の伝説研究などの手法を用いて分析した本です。
自分は、著者の廣田龍平さんより結構年上だけど、2chオカルト板が賑わっていたころわりと見ていたから、取り上げられている事象は知っているものが多くて、楽しく読みました。
掲示板には、たくさんの「名無し」(たまにトリップつき)による投稿が雑多に寄せられていましたね。
きさらぎ駅、くねくね、ヒサルキ、ことりばこ―。
懐かしい…。
著者の指摘している、
”ネット怪談から「因習系」タイプの話―僻地で不気味な集落やモノを発見したり、奇妙な風習に巻き込まれたり、忌み地や封印を侵して恐ろしい体験をする―が減って、「時空のおっさん」のようなSFチックな異世界ものが多くなった”
という話、私もなんとなく感じていました。
著者は「因習系」怪談が、
”田舎(非文明)に対する差別的意識が土台になっている”
と批判的にみられるようになったことを理由にあげています。
その他にも、日本全体として伝統的な習俗や祭祀が廃れてきたことや、土着の古事や謂れを語って若者にインスピレーションを与えた、戦前・戦中世代のじいちゃんばあちゃんがいなくなったことなども影響しているのかなーと思います。
現在「因習系」怪談を読み直すと、
「いまどきの祖父母世代って、こんな年寄り然とした話し方しないよなー。もっと若いよなー」
と、違和感を抱くことが多いんですよね。
時代が、ひと世代進んでしまったことを実感します。
歴史や土地、伝統文化なんかを絡めていろいろ想像できる「因習系」、好きなんですけどねー。
おもしろかった!
でも、図版のページはサッとめくりました。
むかしから怖い画像・映像は苦手で…(活字は平気)。
本書に引かれている、小さな白黒図版程度のものでも、だめなんですよねー。