書体の法則 -The Rule of Typeface-
書体が「デザインの人格」を決める。
(この記事は『人を動かすデザイン22の法則』からの一部抜粋と、書き下ろしのコラムを組み合わせて書籍の紹介をしています。)
書体はデザインの人格を作る
文字を含むデザインのほとんどは、選んだ書体によって印象が大きく変わります。
1)Trajan(トレイジャン)
「Trajan(トレイジャン)」は、エレガントなセリフ書体(日本語で「とめ・はね・はらい」のような筆記体の特徴を強調した小さな飾りがついた文字デザインを持つ書体)です。
Trajan(トレイジャン)のデザインそのものは、高貴さを身に纏っているため「正当な」「由緒正しい」雰囲気が作りやすくなり、結果として「洗練された荘厳」や「スケール感のある」ハリウッドの歴史ものの映画タイトルのような雰囲気になるのが特徴です(実際にTrajan(トレイジャン)を使用した映画のタイトルはすごく多いです)。
一世代前のGODIVAチョコレートが、Trajan(トレイジャン)フォントを使用していたので、そのイメージが強い方もあるかもしれません(今は、Optimaを使用していますね)。
2)Gill Sans(ギル・サン)
Gill Sans(ギル・サン)は「サンセリフ」と言われるデザイン(「とめ・はね・はらい」のような飾りを持たない=ゴシック体のこと)のフォント。
イギリスの国営メディアBBC や高級車メーカーRolls RoyceやBENTLEY、また、先日、世界中のファンに惜しまれながら世を去ったイギリスの家具デザイナー・インテリアデザイナー テレンス・コンラン卿によるホームファニシング・ストア「THE CONRAN SHOP(ザ・コンラン・ショップ)」などが使用していることでも有名なGill Sans(ギル・サン)。
Trajan(トレイジャン)もGill Sans(ギル・サン)も共通していることは、機械に頼らず人間が手描きでデザインした原型をもとに復刻したフォントであるため、ヒューマニティの訴求、つまり、情緒的なコンテンツに向いています。
3)DUAL(デュアル)
DUAL(デュアル)は、いわゆる幾何学的(ジオメトリック、人間的=ヒューマニストの対義語)なデザインと読みやすさ(視認性)を兼ね備えた比較的新しい時代のサンセリフ書体。
シンプルで機能的なグリフ(=Glyph、個々の字形の事)の他に、非常に特徴的で装飾的なデザインのグリフ(Glyph)も格納しています。
つまり、機能的なフォントと装飾的なフォントの2種類を、1書体(を使用しながらデザインを切り替えて)で楽しめるようにデザインされています(だから、DUALと言うネーミングなんですね!)。
意思を持って書体を選ぶ
Trajan(トレイジャン)もGill Sans(ギル・サン)もデザインそのものが行われたのはかなり古い時代であるにもかかわらず、現在の最新OSに合わせて最適化されています(なので、私たちは日常的にこれらの書体を使用することができます)。
ところが、たとえば、家の中身が同じであっても、コンクリで打たれたビルに住むのと、歴史を感じる古民家に住むのでは、人が感じるイメージは大きく異なります。
つまり、同じ文章であっても、伝統や格式を訴求できる書体を使用するのと新しいチャレンジや雰囲気を持つ書体を使用するのとでは、読み手に伝わる印象は全く変わってしまうということです。
『これならわかる! 人を動かすデザイン22の法則』
今日は、書体の法則 -The Rule of Typeface-のポイントについて、イラストを追加して紹介しました。
企業活動やブランドイメージを大切にする情報発信において、どのような「世界観を作り上げるのか」についてあれもこれもと欲張ることは無意味であり、一点に絞る必要があります。
そして、世界観を決めたら、なるべく書体を統一して、全ての発信、すべての事業を包括することをおすすめします。
日本語の書体について、また「統一感」を作る書体選びのポイントについても『これならわかる! 人を動かすデザイン22の法則』 にもう少し詳しく書きましたので、ご興味を持っていただけた方、ぜひ、お手に取っていただけたら嬉しいです。
01 一点の法則
02 余白の法則
03 書体の法則 → 書体で印象が変わる!
04 色彩の法則
05 コントラストの法則
06 映えの法則
07 アングルの法則
08 錯覚の法則
09 模倣の法則
10 引き算の法則
11 整列の法則
12 反復の法則
13 重力の法則
14空気の法則
15 占領の法則
16 制限の法則
17 逆張りの法則
18 選択の法則
19 一瞬の法則
20 鏡の法則
21 男女の法則
22 記憶の法則
これならわかる! 人を動かすデザイン22の法則 実践講座
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