【200】パルジファル第一幕への前奏曲:1938年のフルトヴェングラー・ベルリンフィルの演奏が疑似ステレオで蘇るなんて、感謝感謝です! 2024.4.24
1 最もブルックナー的な音楽は?:ワーグナー「パルジファル第一幕への前奏曲」について
私はブルックナーの大ファンで、ブルックナーがもっともっと沢山作曲してきてくれたらよかったのになどと思ってしまっています。
そのため、ブルックナー以外でブルックナー的音楽は無いかと捜したりもしているのですが、ブルックナーの世界に最も近い音楽家としては、一番にシューベルトがそうなのではないかと思うのです。
「未完成」の第1楽章の冒頭部分なんかは、これはブルックナーだと言い聞かせて聴くとブルックナー開始そのものように聴こえてきます。
第一楽章のその後の展開も、第二楽章の美しい旋律の連なりもブルックナーの交響曲の世界に非常に近しいように感じるのです。
そしてもう一人がワーグナーで、ワーグナーの音楽の響きはブルックナーに非常に近いと感じます。
もちろん、話は逆で、シューベルトやワーグナーがブルックナーに似ているのではなく、ブルックナーの方がシューベルトの作曲技法を学んだのであり、また、ワーグナーの音楽に心酔し憧れてその音楽のオーケストレーションなどを模倣したのであって、ブルックナーの方が二人に似せていたのであったわけです。
いずれにしても、ブルックナーの音楽はサウンド的にはワーグナーに一番似ている一方ワーグナーの音楽性とブルックナーの精神性や音楽性とは決して似てはおらず、音楽の世界としてはシューベルトの方が近いように感じられます。
けれど、このワーグナーの「パルジファル第一幕への前奏曲」については、その音楽の宗教性、静けさ、透明さなどがブルックナーの世界と重なっていて、これをそのままブルックナーの八番の第3楽章に持ってきても違和感が無いように思えたりするのです。
2 「パルジファル第一幕への前奏曲」フルトヴェングラー1938年のSP盤がステレオになって蘇った!!
そのパルジファルを1938年にフルトヴェングラーが演奏したレコードのSP盤が残されています。
それが下です。
一聴してわかるように、当然モノラルで音楽を語る以前に針音がすごいです。
フルトヴェングラーファンの私は多少の音の悪さにはかなり免疫ができており、駄目な演奏をいい音で聴かされたって駄目な所があからさまになるだけじゃないかと言ってしまったりしますが、それでも流石にこの音質レベルだと演奏スタイルなどについての史料的価値のみで、鑑賞しようという気にはなれませんでした。
そんな中で、ユーチューブで目に付いたのが、
【STEREO】フルトヴェングラーのワーグナー:パルジファル(1938)」というタイトルでした。
フルトヴェングラーの場合、こうした高音質化で注目を集めようとする例は数多く、聴いてみると、ほとんど変わり映えしておらず、首をかしげることも多いのです。
でもこのタイトルを見て見過ごすという選択肢はなく、眉に唾をつけ、大きな期待はせず再生を押したのです。
驚きました。
コメントに「SPからの盤おこしなので、ノイズが多いです」とあったのですが、もとになったのが上の音源だったのかどうかは判りませんが、あれほどあった針音がほとんど無くなっていることに驚きです。さらに疑似ステレオ化することで音の広がりと厚みが生まれており、原盤より圧倒的にクリアで臨場感が増した、充分に鑑賞に堪えうる音質に生れ変っていたのです。
実際この「パルジファル第一幕への前奏曲」はなんと美しい曲でフルトヴェングラーの演奏もなんて素晴らしいのだろうと改めて思いました。
3 Mahkun Yoshidaさん
調べると、Mahkun Yoshidaさんという方が制作されたものようでしたが、一体どのような技術を使えば、こんな魔法のようなことが出来るのでしょう。ほんとうにびっくりです。
下のこの方のサイトには、バイロイト、ルツェルンの第九、1954年の田園、カイロの悲愴、運命、英雄、未完成等々の歴史的名演をステレオ化したものがずらりと並んでいて、そのラインナップに目を瞠ってしまいました。
(57) Mahkun Yoshida - YouTube
どのような技術をお使いになったとしても、これだけやるためには、やはり膨大な手間と時間と情熱とを掛けられたものと推察いたします。
Mahkun Yoshidaさま、労作ほんとうに有難うございます。
こうしたトライをしていただいていることに感謝、感謝です。
*補足
ちなみに、この曲の最高の名演とされているのはハンス・クナッパーツブッシュさんの演奏です。
1962年の演奏ですが、こちらも文句なし間違いなしの名演ですね。
けれど、今聴いていてふと思ったのですが、この演奏だとあまりブルックナー的だと感じられませんでした。何故だろう?