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【231】ブルックナー交響曲第7番の新改訂版?について

  僕は前回【227】の記事の最後の所でブルックナーの7番の新しい聴き方の提案について語りました。
 その件についてさらに検討して修正し、実際にその提案に従ったものを作ってユーチューブにUPしてしまいましたので、よかったら聴いていただいて感想をコメントいただけたら幸いです。

1 ブルックナー交響曲第7番の新改訂版をフルトヴェングラー指揮ベルリンフィルの演奏で


 ブルックナー交響曲第7番の全く新しい改訂版。
 それは一体どのような改定をおこなったのか?

 まず聴いてみてください。 最後まで聴き通したとき、この改訂版のフィナーレの凄さには驚嘆すると思います。

2 ブルックナー交響曲第7番のフィナーレが弱いという問題

 ブルックナーの交響曲の中の最高傑作といえば第8番であるというのは大方の賛同するところだと思います。
 反面、これだけ素晴らしい第1、第2、第3楽章を持っているのに、第7番を推す人は少ない。

 3楽章までだったら7番の方が大きくリードしているといってもおかしくないのに、ほんとうに惜しいことに7番は第4楽章がどうしようもなく弱いのです。
 今の第4楽章は、悪いとまでは言いませんが、素晴らしすぎる前3楽章を受け止め、締めくくるには決定的に力量不足だと僕には思えるのです。

 それに引き換え8番の第4楽章の悠然として壮大なコーダの素晴らしさはどうでしょう。何はともあれ、終わりよければ全てよしなのです。

 僕は【224】の記事で書いたように、最近9番の補筆完成版の第4楽章を10種以上聴き比べてみて、第4楽章は、補筆したコーダの問題ではなく、それ以前にブルックナーの自筆原稿の部分において、どうしようもなく力不足である。これでは前三楽章を受け止めきれていないと思うに至りました。
 
 もしもこのような形の第4楽章が加えられていたなら、第9番は第7番と同じ運命をたどり、残念な惜しい曲になってしまっていたかもしれません。

 第9番が第3楽章までの未完で終わったことは、神秘性と想像の中での期待値を高め、第9番にとってはかえって良かったのではないかとさえ僕は思うのです。

3 新改訂版のアイデアが降ってきた

 7番に話を戻します。
 7番の4楽章はなんとかならないのか?
 この素晴らしい交響曲のフィナーレはどのような形であるべきなのか?

 9番の補筆問題にからめて、こんなことを考えながら7番を聴き直していたとき、ふと第一楽章のフィナーレが凄すぎることに驚かされたのです。

 そして、これなら7番の全曲を締めくくれるじゃないかと思えたのです。

 第1楽章を第4楽章にもっていったらどうなるだろうか?
 第1楽章には第4楽章に持ってくる。
 第2楽章には8,9番同様にスケルツォを持ってきて、第2楽章は第3楽章に回す。つまり、4,3,2,1楽章の順にする。
 このアイデアで聴いてみると、プレッシャーのない第1楽章に持ってきた第4楽章は悪くない、全楽章のバランス的にはちょうどよいのではないか。
 けれどこの並びだと3(元2)楽章から4(元1)楽章へのつながりがピアニシモからピアニシモになってモヤモヤするので、スケルツォは元通り第3楽章に入れて、4,2,3,1の順に入れ替えるのがベストとしました。

 フルトヴェングラー/ベルリンフィルの演奏をつかい、楽章を入れ替えてつなげたものが上掲のものです。
 フルトヴェングラーの引き締まった意志的な演奏は、この新改訂版に合っているような気がします。

4 もう一つの聴き方

 途方もない暴挙だと、お怒りになる方も多いかもしれませんが、フィナーレの素晴らしさと聞き終えた時の充足感には賛同していただける方もいらっしゃるのではないかと思います。
 一つの思考実験として興味を持っていただけたら嬉しく思います。

 この改訂版で残念なのは7番の第一楽章の心震える導入部が失われてしまうことです。
 そこで、もう一つの形としては、1,3,2の三楽章構成とし、第9と同じく未完の大曲にしてしまうことです。
 もしかしたら、こちらの方が評価が高まっていたのかもしれない、などとも僕は勝手に思うのです。


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