【39】興味深い話:私鉄からJRに乗り換える狭い通路の拡張工事が中止になったのは何故? 2022.6.22
新聞か何かで読んだ東京か神奈川で実際に有ったというお話です。
JRと私鉄が交差するあるターミナル駅で、朝のラッシュ時には私鉄からJRに大勢の人が乗り換えるのですが、連絡通路がとにかく狭くて、いつもそこが一杯になりぎゅうぎゅう詰めの大渋滞となって中々前に進めない、当然、通勤客からは毎日のように大量の苦情が寄せられるという事態になっていたのです。
駅の側もなんとかしなければと、連絡通路拡幅の具体的な工事計画を練り着工寸前まで行ったのです。ところがその計画をみたある人がふとある懸念を抱き、ある検討を指示した結果、一転して工事はとりやめになったそうなのです。
その人は、もしも通路が広くなったら人の流れはどうなるかに疑問を持ったのでした。
シミュレーションを行なうと、到着した私鉄からどっと吐き出された乗客がJRに殺到するとホームが溢れ人が線路に落ちてしまう、という結果になったのです。
電気回路を知っている人ならピンとくると思いますが、今まではその細い通路が抵抗になっていて、私鉄に到着した大量の乗客が一気にJRのホームに押し寄せることを防ぎ少しずつしか移動できないようにしていた。つまりその通路がパルス波を平均的な流れにする平滑化フィルターの役割を果たしていたのでホームがあふれることが避けられていたというわけなのです。
それにしても、もしもその人がおらず、そのまま計画が進んでいたら、工事が完了して偉い人が来てテープカットなどして、「広くなりました、これでもう渋滞することなく通れるようになりストレスから解放されることになりました。」などと挨拶して、皆が満面の笑顔で万歳して、そして殺到した人がボタボタホームから落ちていき、電車は緊急停止して最悪の事故までには至らぬとも、大騒ぎになり、原因は何だと紛糾した挙句に責任者の首が何個か飛び、結局通路にはロープが張られ通行制限がされる。というような未来が待っていたかもしれないのです。
「状況判断とは、未来の予測と制御である。」アイザック・ノーレス
何かをすること、何かをしないことが、どのような結果を招くのか想像力を常に働かせ、よい未来が得られるように先回りして行動しなさい。というアイザック・ノーレスさんの言葉を思い出しました。
その記事はそこまでで、その後どうなったかはわかりませんが、狭い通路をそのまま放っておくわけにはいかないでしょうから、JR側のホームを広くして乗り換え客を吸収できるようにするなど総合的な対策がとられたのではないかと思います。
後列の人を信じて立つホーム
という川柳をみたことがあります。うまいですね。
私もホームではなるべく一番前にはならないように、先頭になったときはいつも後ろの人の気配には気を付けるようにしています。