【153】「水の都」三島市の湧水の不思議 富士山の雪解け水ってほんとなの? 2023.7.4
7月4日に三島の市立図書館に行ってきましたが、少し早く着いたのでお隣の「白滝公園」を散策しました。
そうしたらほんとに綺麗な水が溢れ、流れていたのです。
池では幼稚園の子供たちが引率されてきて先生と一緒にじゃぶじゃぶ水遊びをしていたり、街中にこんなきれいな水が流れているのは幸せなことだなあと思いました。
その時、ふと、この豊かな水がどこから来るのだろう?と疑問に思ったのです。確か富士山の雪解け水なのだとか聞いたことがあってなんとなく納得していたのですが、富士山なんてすごい離れているし、ほんとにこんな所まで来ているのだろうか?と考えてしまったのです。今回は水の都三島の水事情について調べてみます。
1 「三島農兵節」知ってますか?
富士の白雪ゃノーエ
富士の白雪ゃノーエ 富士のサイサイ
白雪ゃ朝日でとける (そりゃ)
とけて流れてノーエ
とけて流れてノーエ とけてサイサイ
流れて三島にそそぐ
三島女郎衆はノーエ
三島女郎衆はノーエ 三島サイサイ
女郎衆はお化粧が長い (そりゃ)
お化粧長けりゃノーエ
お化粧長けりゃノーエ お化粧サイサイ
長けりゃお客がこまる
以下略
静岡県三島市にはこんな歌詞の「三島農兵節」という民謡があります。
この歌は私がまだ東京で学生だったころになんとなく聞いたことがありましたから、そこそこ知名度はあるようなのですが、冒頭部分を改めて考えてみるとちょっとおかしいのです。
2 富士の白雪はほんとに三島にそそいでいるの?
富士の白雪が溶けて流れて三島にそそぐとありますが、これほんとうなのでしょうか?
第一に富士山に降る雨は皆火山灰のがれきの中に吸い込まれてしまうので川なるものは存在していません。
下図を見ると分かるように、富士山方面から三島に流下する川と言えば黄瀬川位なのですが、黄瀬川は
「黄瀬川本流は、箱根乙女峠を水源とし、御殿場高原を西へ流下し、裾野を経て、沼津で狩野川本流に合流します。」とあるように箱根が水源になっていますし、黄瀬川の最大の支流である桃沢川も富士ではなく愛鷹山を水源とする川なのです。
富士山の麓から発っして黄瀬川に合流する支流は鮎沢川等何本かありますが、いずれもそれほどの流量ではなく、富士山の雪解け水が三島に流れていると言えるほどのルートにはなっていないと感じてしまうのです。
3 三島の湧き水は富士山の雪解け水だってほんとなの?
地表に出た川がないとしたら、地下水はどうなのでしょう。
三島駅の周辺にはいくつもの湧水があります。
今朝行った白滝公園にも、綺麗で豊かな湧き水が溢れ流れていました。
この湧き水は富士山の雪解け水だと言われているのですが、三島駅から富士山頂までは直線距離で30kmもあるのです、こんな長い距離を途中で吸い込まれもせずに流れてくるなんておいそれとは信じられません。
疑り深い私としては、その辺りの真偽を確認すべくネットで色々調べてみましたら、そうだったのかとうなづけることが沢山わかったので紹介します。
4 一万年前の富士山大噴火と三島溶岩流
発端は一万年前に遡ります。それ以前の富士山:古富士は標高2400m位だったそうですが、1万年前に大規模な噴火が繰り替えされ、大量の噴出物と溶岩によって3000m級の成層火山が形成されていったのです。
富士山のマグマは玄武岩が主体で粘度が低くサラサラして流れやすいことが特徴だそうで、この時噴出された溶岩は下図のように溶岩流として四方八方に流れ下って行ったのです。この時愛鷹山の東側と箱根山との間を抜けてて南東側に流れたのが三島溶岩流であり、これが約35kmを流下して三島まで届いていたのです。
三島駅の北口や、南側の楽寿園、白滝公園などにはこの時の溶岩が固まった跡が今もはっきりと残っており、私はこれは江戸時代の宝永大噴火の時のことかと思っていましたが、そうではなく1万年前のことだったのです。
5 溶岩流が地下水道になっている?
溶岩が流れ出したとき、溶岩の表面と底面は急速に冷却されて固まるときにガスが抜けて軽石状に破砕します。けれど内側はゆっくり冷えて水を通さない緻密な岩になります。何次にも繰り返して噴出した溶岩が積み重なることで、ガサガサの水を通しやすい層と通しにくい層が幾重にも重なっていきます。溶岩流最末端の楽寿園に溜まりこんだ溶岩の厚さはボーリングして調べた結果75mもあったというから驚きます。
富士山の広大な領域に降った雨は表面のガサガサの瓦礫の中に染み込み、溶岩地層の中に吸い込まれ、地下水となって溶岩流の中の不透層に挟まれた透水層の中を流れ、溶岩流の末端で地層の断層部分から地表に湧き出すということなのだそうです。
つまり富士山の雪解け水が三島にそそぐのは地表の川によるのではなく、溶岩流が天然の地下水道管になってくれていて途中で散逸することなく三島まで直送で届けられるという仕組みだったのです。
6 確かに富士の白雪の雪解け水は三島に届いていた!
この溶岩流の末端部や断層部分からの湧水というのは、東洋一の湧水量を誇る柿田川がそうですし、西側では白糸の滝などもそれにあたるわけですが、実際、下図に見るように、平成10年に富士山の積雪が急激に雪解けした際に、楽寿園の小浜池や柿田川、富士山の西湖や本栖湖などの水位が急上昇したというデータがあり、富士の雪解け水が溶岩流を通って三島まで届いていることは間違いないことがほぼ立証されていたのです。
結論として
「富士の高嶺に降る雪は地下水道を通って確かに三島にそそがれていた」
のでした。
7 三島白滝公園の湧水の行方は?
白滝公園では湧き水が園内を流れた後、目の前の清流に流れ込んでいます。
その目の前の清流は「桜川」と言い水源は白滝公園より少し上流にある「菰池」の湧水で、これも富士山の雪解け水がここで湧き出して、いきなり川が発生しているという所が規模は小さいですが柿田川と共通しています。
8 桜川と三嶋大社の神池の関係は?
この桜川ですが、菰池を水源とし、白滝公園の湧水を加えた後約500m離れた「三嶋大社」に向かって東に流れていきます。
源頼朝が造営した三嶋大社には神池という大きな池があります。
ということは桜川がその水源になっているのか?と早トチリしたのですがそうではなかったのです。
三嶋大社・神池の水源 (fc2.com)
という記事に研究成果が載っているのですが、下図のように神池の水源は箱根山系を水源とする大場川で、大社から北へ約2kmの地点にある「幸原堰」で取水された水が宮川用水という水路を通って神池に流れ込んでいるのだそうで大社創建の際に同時に造られ当時から神池の水源として使われていたそうなのです。
桜川はというと、下図のように実は神池からの排水路として用いられていたのです。
神池の北から宮川用水が流れ込み、南側から排水は桜川に流れ出て、桜川はその水を加えて南に流れ、様々に分岐して農業用水として使われた後、御殿川に合流し、御殿川は大場川に合流し、大場川は狩野川に合流して最終的に駿河湾に流れ込むという形になっています。
9 白滝公園の豊かな水
白滝公園の一番北には底を補装した浅い池がつくられていて、子供たちがはいってジャブジャブ遊べるようになっています。池の奥に湧水があり小さな滝となって池に流れ込んでいます。
10 まとめ
たまたま訪れた白滝公園から三嶋大社の水源にまで疑問が拡がって長い記事になってしまいましたが、色々分かって満足です。
最後までお付き合い有難うございました。
富士山の湧水、三島の湧水については、いつかまたもっと詳しく調べてみたいなと思いました。