【122】WBC決勝戦:神話の終わりで始まり 2022.3.22
誰もが既に知っているように第5回WBCは日本の優勝で幕を閉じました。
そして見たものすべてがこの優勝について語っており、私が付け加えることなど1ミリもないのですが、自分のためだけに書いておこうと思います。
このWBCは大谷とトラウトの対決が観たいということから動き出したように思います。
けれどそれが実現するためには両チームが決勝まで勝ち上がらなければならず、それが実現したとしても、大谷の3度目の登板をエンゼルスが許すかという問題があった。許可が出たのは直前だったようです。私はエンゼルスサイド自体がそれを観たかったのではなかったかと思うのです。
ダルビッシュを8回、大谷を9回に登板させることを決めて、その前の投手を繋いでいった。これは栗山監督がこのWBCを完結させるために思い描いていたストーリーだったと思います。
しかしトラウトの打席が9回に回ってくるかは誰も予想することはできなかった。大きく点差が付いたならファンサービスでトラウトの打席に大谷を送るということは可能だったかもしれませんが、あの緊迫した試合においてそんなことが許されるような状況は有得なかった。いかなる天の配剤なのか8回にダルビッシュがホームランを打たれ1点差に迫られ、その後もヒットを打たれながら必死に後続を断った。もしもここで走者が出なかったら9回にトラウトまで回ることはなかった。
9回裏ブルペンから大谷がマウンドに向かう姿には胸が締め付けられた。
そして先頭打者、気合が入りすぎたか四球を出してしまう。不安がよぎる。しかし1番ムーキー・ベッツをセカンドゴロゲッツーに仕留め咆哮。
こうして第5回WBCの決勝戦は、9回裏2死走者なし、ホームランが出れば1打同点という場面でトラウトが打席に立ち、余人を交えぬ1:1の対決が実現してしまったのでした。
1球1球全力で投げる大谷、全力で迎え撃つトラウト、カウントはフルカウントまで進み、そして最後の6球目は渾身のスライダーが真ん中から外に急角度で動き、全力で振ったトラウトのバットが空を切った。
自分の最高を超える球でないと抑えられないと思っていたとトラウトへのリスペクトを語った大谷のほんとうにこれまでで最高の切れ味のスライダーだった。帽子を投げ捨てグローブを投げ捨て感情を爆発させる大谷に全員が駆け寄って歓喜の渦に、映画を超えた有得ないエンディングだった。
試合後大谷はWBCのMVPに選出されWBCにおける大谷神話が幕を閉じました。驚くべきことは大谷選手の夢実現能力です。大谷さんは高校の時に「27歳でMBCで世界一、そしてMVPになる。」という夢を書いていたという事実です。大谷さんは今年28歳一年遅れでしたがその夢を実現してしまったのです。ほんとうに有得ないユニコーンなのかもしれません。
最後に「今大会の大谷で最も印象に残ったシーンは何か?」という問いに私ならこう答える。それは準々決勝イタリア戦の5回の投球です。この試合初回から全力投球で鬼神のような投球を続け4回まで完璧に抑えていた大谷が5回にまさかの連打を浴び2失点し、2死1.3塁とランナーを残しての降板に追い込まれたのです。この時の大谷は必死の形相で腕を振るがすでに球に力が残っておらず後一人のアウトが取れなかった。こんなに一杯一杯の大谷の姿は初めて見ました。大谷ほどの選手が4回50球程度投げただけでこれほどに消耗している、そのことに驚かされました。大谷選手もアンドロイドではなく生身の人間だったのだと実感させられたのでした。
あの山本由伸投手が、メキシコ戦で5,6,7回と完璧なリリーフを見せていたのが8回にいきなり崩れて連打され2点を失なった姿にも驚かされました。この回は明らかに球威も制球力も落ちていました。
大谷、山本クラスの完投能力を持った投手でも本当に全力投球すると50球くらいが限度なのかもしれないと思ったのです。
しかし逆をいうと彼らがあの時は全球をそれほどまでに全力を振り絞って投げていたという証しだったのかもしれません。
*今調べていて気付いたのですが、準決勝メキシコ戦でまさかの3ランを喫した佐々木朗希投手も3回を0に抑えての4回でした。本当に全力で投球すると50-60球が限度というのは事実なのかもしれません。
WBCの大谷神話は一旦幕閉じましたが、大谷神話はこれからが本番、今シーズン大谷がどのような活躍を見せるのか、彼が謙虚で高みを目指し続ける限り、次は何を見せてくれるのか、夢は始まったばかりです。